中で正しく評価されないなら、外で自分の信じる道を歩みたい。そう決意して創業したのがMSOLだった。
高橋は虐げられた経験をエネルギーに替えて経営してきた。その怒りは私憤に近かったが、近年は怒りの質が変わった。きっかけはコロナ対策で配られたアベノマスクだ。
「PMOは、QCD(品質、コスト、納期)の優先順位を決めることが鉄則。コロナ対策で最優先すべきは納期でしたが、アベノマスクはそこが曖昧で、歴史に残る失敗プロジェクトになった。PMOの不在は、一組織の問題ではない。コロナでいやが上にも社会全体に目が向くようになりました」
MSOLは現在、新たに教育機関の設立を検討中だ。社内向け研修を外部に公開するほか、中高生にもボランティアでプロジェクトマネジメントを教える。この新規事業は、高橋が抱えるものが私憤から公憤へと変質したことと無関係ではない。
「教育事業はもうからないんです。ゆくゆくはわが社のツールを使ってもらうことにつながれば理想的ですが、収益はよくわからない」
いっけん弱気な発言だが、現在のソフトウェア事業のように、収益が出なくてもしつこくやり続けて、いつかは必ず成功させるという宣言にも聞こえる。高橋の怒りの火は、簡単に消えたりしないのだ。
高橋信也◎1972年生まれ。福岡県出身。上智大学経済学部を卒業後、アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)入社。複数のコンサルティング会社などを経て2005年にマネジメントソリューションズを設立。12年より現職。