DXと切り離すことができないリスキリングは、当然のことながらDXに積極的な企業ほど重視している一方で、DXに消極的な企業では行われていないのが実情です。DXを推進するかしないかで、社員の能力にも格差が生まれようとしています。帝国バンクが行った「DX推進に関する企業の意識調査」から、その実態が見えてきました。
調査によると、何らかのリスキリングを実施している企業は全体の48.1パーセントありましたが、DXに取り組んでいる企業とそうでない企業とを比較すると、DX組では81.8パーセントなのに対して、非DX組は32.2パーセントでした。
またこの調査ではっきりわかったのは、大企業ほどリスキリングに積極的で、中小企業、しかも従業員数が少なくなるほど消極的になるという傾向でした。リスキリングを実施している大企業は60.4パーセントである一方、中小企業は45.8パーセントです。業種別では、リスキリングに積極的なのはDXが急務とされている広告、情報サービス、金融が上位となっています。下位は農林水産業、飲食料品卸売、建材や家具などの製造業です。ガラス繊維製造業者は「リスキリングは必要に迫られた段階で検討」、またDXは「現在考えられている以上の費用対効果が見込まれた場合に検討」と話しています。
DXとリスキリングで、大企業と中小企業にこうした格差が生じる背景として、中小企業は「目の前にある障害をクリアすることが第一」という意見が聞かれました。経営に余裕がないというわけです。また、社員教育に投資しても、スキルを身につけてから転職されては困ると「二の足を踏んでいる」状態だとも言います。今、お金をかけてDXする必要性を感じないというのが実情でしょう。
しかし、DXに取り組んでいない企業で実施されているリスキリングの内容でトップだったのが「経営層による新しいスキルの学習、把握」(41.5パーセント)となっていました。これがデジタルスキルを意味するのであれば、DXとリスキリングへの関心の高まりと考えることができます。また「社のビジネス形態に適応するDX推進方法を相談できるところが解らない」という一般機械修理業者の意見もありました。やりたくてもできない中小企業もあるということです。
時代の趨勢として、デジタルリテラシーは個人にも企業にも求められることになります。そのとき、DX化されていない企業は孤立してしまう心配があります。日本政府は「構造的賃上げと成長力の強化を図り、官民連携のリスキリングと成長分野への投資推進、人への投資の支援パッケージを5年間で1兆円へ拡充」を打ち出しました。中小企業への手厚い支援を期待したいですね。