ライフスタイル

2022.12.11 11:30

整形以上の効果? 「異日常」を演出する「髪」の可能性

一橋ビジネススクール 楠木建教授


ファッションアイテムとしての付加価値が加速中


谷本:「かつら」から「ウィッグ」という呼び方に変わったタイミングは、いつ頃からでしょうか?
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津村:2009年あたりでしょうか。女性用ウィッグを「レディスアデランス」という名称から「フォンテーヌ」とブランド名変更のタイミングで「かつら」という言葉を社内でも使わないように徹底しました。同じ頃から、他の会社も「かつら」から「ウィッグ」と呼び方を変えたように思います。英語では、「かつら」を「wig(ウィッグ)」といいますが、「ウィッグ」を使用することで、よりグローバルな視点で捉えられるようになりました。

谷本:そういう意味では、「ウィッグ」が、リ・ブランディングに一役かったのでしょうか?

楠木:ひとつひとつの言葉がイメージを決めるので、呼び方を「ウィッグ」と変えたことで、ファッションアイテムとして認識され始めたのだと思います。靴や時計は、人の目につきにくいけれど、ウィッグ=髪は、ぱっと見てすぐ分かる。だからファッションアイテムとして、とても優れているのではないでしょうか。
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谷本:女性のファッションアイテムに比べて、男性のファッションアイテムは、少ないように思いますが。

津村:最近では、メンズ・スキンケアやメイクなど、男性のファッションアイテムが増えてきています。そのため、ファッションとしてのウィッグに、マーケットの広がりを実感しています。

最高の技術に裏づけされた「心からのおもてなし」


谷本:アデランスさんといえば「高い技術力」がイメージされますが、技術力についてお聞かせくださいますか。

楠木:私が愛用しているウィッグは、激しい動きをするライブ中も乱れることなく機能していますが、意外なことに、娘が絶賛しているのがアデランスのドライヤー。とてもいいそうで、他社にはない技術が2〜3個組み込まれていると聞きました。私は、ライブ活動をしていたからこそ、ウィッグに出会えましたが。

谷本:ウィッグは、「自分が理想とするイメージに近づける切符」みたいな存在なのですね。

津村:技術開発について、3つに絞ってお伝えしましょう。1つ目は、増毛と育毛技術に力を注いでいます。2つ目には、エンターテイメント業界の一旦を担う商品開発です。具体的には、劇団四季のミュージカル『キャッツ』の日本公演で猫のウィッグの制作を請け負っています。舞台で3時間、激しく動き回って汗だくになろうとも全く取れることがない質の高いウィッグを開発しました。そして3つ目は、大学と共同で「ヘアケア」や「スカルプケア」などの研究を進めています。

弊社は、「最高の商品、最高の技術と知識、心からのおもてなし」を経営理念に掲げておりまして、今後は、ビューティ&ヘルス分野へも更に広げていきたいと思います。
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インタビュアー=谷本有香 文=中村麻美

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