「多様性」が広がるウィッグ効果
谷本:先生の考え方は、「多様性」が求められる、いまの時代に合致しているのかもしれませんね。髪は、見た目で最も変化が表れる箇所ですが、「髪が持つ役割」について、どのように考えていらっしゃいますか?
津村:髪型ひとつで、整形手術をしたくらいの劇的な変化が図れると思います。整形も最近はオープンになってきて、髪に対しても隠すことがなくなる方向に変わってきました。
俳優の船越英一郎さんは「私もアデランス」と公表しており、スキージャンプの葛西紀明選手は、「理想のヘアスタイルがしたい」という理由で、アデランスをつけ始めましたが、過酷な環境の競技中も髪型が保たれるばかりでなく、結果として、スキージャンプの成績も上がったと伺っております。
つまり、「髪がもたらす心との関係性」が連携していることが分かったのです。葛西選手は、50歳を過ぎても金メダルを狙うと宣言していらっしゃいます。最近では男性が眉を整えたりメイクをしたりするように、ウィッグもポジティブに認識されるように変化しつつあります。
谷本:ファッションのひとつとしてのウィッグについて、ロックグループのメンバーとしてステージにも立たれている楠木先生は、いかがですか。
楠木:私は、趣味で35年以上、音楽活動をしています。でも、丸刈りの髪型だとステージに立った時にしっくりこなくて、キャップをかぶっていました。ところがアデランスに出会ってウィッグでステージに立つと、とても気合いが入る。それ以来、ライブでは必ずこのスタイルに。大好きなロックバンド、レッド・ツェッペルンのロバート・プラントみたいなロングヘアのウィッグで演奏すると、気分が高揚して楽しくなるんです。だから私にとってのウィッグは、お祭りごとの「非日常」でなく、もうひとつの日常である「異日常」なのです。
経営学者ピーター・ドラッカーが、「何でこれがいままでなかったんだろう?と思わせてくれるものこそ、イノベーションである」と言いましたが、ウィッグは私にとって、正にイノベーションです。
谷本:装着感やお手入れは、どんな感じなのでしょう?
(一橋ビジネススクール 楠木建教授)
楠木:フルカスタムだから、装着感は、とてもいい。私の場合、簡単につけられて修理も必要ないです。余談ですが、ライブではベースを担当しているのですが、ウィッグをつけると不思議と指が早く動くんですよ(笑)。