一方、日本パブリックリレーションズ研究所が2万人に行ったアンケートによると、約4割の人が薄毛で悩み、そのうち約4割が「ハゲ」という言葉を投げかけられるなどの直接被害を受けているという。
その言葉を気に病む人がウィッグを被ると、今度は「ズラ」と言われ、からかわれてしまう。そんな救いようがない状況に陥るケースが明らかになっている。多様化を迎えたこの時代、「薄毛問題」と「毛髪ビジネス」をポジティブに考えるForbes JAPAN執行役員 Web編集長の谷本有香が、アデランス代表取締役グループCEO 津村佳宏社長と一橋ビジネススクール 楠木建教授に斬り込んだ。
隠す「かつら」から、心をケアする「ウィッグ」へ
谷本:毛髪関連事業のリーディングカンパニーとして、毛髪業界を牽引する、御社の変遷をお聞かせください。
津村:当社は男性用オーダーメイド・ウィッグの会社として1968年に創業しました。当時は、男性の薄毛に対する解決策はほとんどありませんでした。テレビCMを打ったところ「パパ、アデランスにしてよかったね」というインパクトあるコピーが多くの方に共感を呼び、47都道府県に店舗を構えるまで拡大しました。
その後、円形脱毛症や白血病や先天性の無毛症など、病気や怪我でウィッグを必要とする方々からの相談が寄せられて、「お子さまの髪の悩みを心の傷にしてはいけない」と考え、1978年からチャリティー活動に取り組み、現在も年間約300人の子供達に無償でウィッグを提供しています。
最近では、NPO法人JHD&C(ジャーダック)と連携して、ヘアドネーションのウィッグ製作の協力をしています。しかし、一部のタレントの方が「ハゲ」「ズラ」と笑いのネタにしたことで、「かつら」という言葉が、すっかりネガティブに捉えられ、「髪ハラスメント」問題として心を痛めてきたのも事実です。
(アデランス代表取締役グループCEO 津村佳宏社長)
谷本:ウィル・スミスさんの出来事がきっかけとなって「髪ハラ」問題が世界的にクローズアップされましたが、楠木先生とウィッグとの関わりは?
楠木:私自身、30代前半から髪がなかったのですが、何とも思っていません。いまは丸刈りにしていますが、毛髪問題は、本人の受け止め方次第なのかな、と思います。