すべての「日食」が一度に起こる金環皆既日食が4月に

ベイリー・ビーズは皆既日食の始まりと終わりに見ることができる。画像はESOのラ・シヤ天文台で2019年7月2日に撮影された一連の画像から作成。1800年代初期にこの現象を発見した英国の天文学者フランシス・ベイリーに因んで名づけられた(P. Horálek/ESO,https://www.eso.org/public/images/eso1912w/)

金環皆既日食(ハイブリッド日食)とは何か? 2023年4月20日、南半球のオーストラリアから西パプアにかけて、この珍しいタイプの日食が起こる。

その稀少性と、わずか1分ほどしか続かないという事実のために、金環皆既日食とは何かを真に理解している人は少なく、その価値を認める人はさらに少ない。その結果、経験豊富な日食マニアでさえ、見逃す人が多い。

それは大きな間違いだ。金環皆既日食は、21世紀にわずか7回しか起きず、同時にすべてのことが起こる日食だ。

金環皆既日食について知っておくべきことのすべてと、なぜそれが起こり、なぜ見に行くべきなのかを以下に説明する。

4種類の日食


金環皆既日食の重要性を説明する前に、地球から見ることのできる金環皆既日食以外の3種類の日食を理解しておく必要がある。

部分日食


最もよく起きるタイプの日食で、太陽の一部分だけが月に隠される。それ自体がイベントであるだけでなく、部分日食(2022年10月に欧州、インド、アフリカで観測された)は、あらゆる日食の最初と最後のフェーズであり、皆既日食の日食帯以外から見る日食は常に部分日食である。いずれの場合も、部分日食を見るためには、常に日食用の安全メガネを使用する必要がある。

皆既日食


最も壮大な日食である皆既日食は、月が太陽円盤を完全に覆い、数分間その光を遮断して不気味な薄明を生み出す。この貴重な皆既日食は、肉眼で見ることが可能で、その前後に部分日食が起こる。皆既日食はおよそ1年半に1回起こり、最後に起きたのは2021年の南極だった。

Progression
皆既日食の進行(NASA/Aubrey Gemignani)

金環日食


金環日食は月が地球から平均よりもわずかに遠くにあり、太陽円盤の中央のみを遮蔽する時に起きる。観測者には月の周りに明るい「炎のリング」が見える。これも日食用メガネを使って見る必要がある。金環日食の前後も部分日食である。

金環皆既日食


稀なタイプの日食であり、21世紀中に7回しか起きない。金環皆既日食の始まりと終わりの短い時間は金環日食になり、その途中で華麗な皆既日食になる。これは、日の出と日の入りの時には月の影が曲面である地表に触れず、膨らんだ部分にしか触れないために起きる。稀にしか起きない理由は、月の影の先端が地球に当たるか当たらないかという範囲が著しく狭いからだ。

皆既日食帯を理解する


日食とは、自転する地球に月の影が映し出されることにほかならない。このため、地球の昼間側に日食の経路となる「皆既日食帯」ができる。皆既日食帯の境界内にいれば、日食を最大限に体験できる。皆既日食帯の幅は、日食中の地球から月までの距離で決まる。日食が起こるのは、月の大きさは太陽の約400分の1でありながら距離も約400分の1なので、空の上ではどちらも同じ大きさに見えるからだ。
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翻訳=高橋信夫

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