作品のコンセプトは「新時代への祝祭」。ライブハウスを舞台にした現実感のあるシチュエーションから始まり、寺の本堂を経由して徐々にサイバーパンクな世界観へとトリップしていく。VRならではの表現を追求する面白さを見出しつつ、演出の面では通常の撮影にはない苦労も多かった。
「カメラワークが激しくなると鑑賞者に「VR酔い」を引き起こす可能性があるため、演出に工夫が必要でした。またVRへの没入感を増すために、撮影は基本的に1カット。ショート動画の流行で、カット割が多く、カメラワークの動きも多い動画が多い中、ワンカットでも飽きない演出をいかに組むかが課題でした。特に実写パートは撮影後の編集が出来ないため、5.1CHサラウンド音響時のMIXを考慮した楽器の立ち位置や、照明・カメラとの入念な撮影検証を繰り返し行いました。メンバーの導線や振り付けは、『東京2020 パラリンピック』の閉会式にも出演したダンサー兼振付師で、バンドのメンバーでもある渡部加奈と打ち合わせを重ねて構築しました」(小澤)
八方塞がりから生まれた表現の破壊力
すべての工程が終わり完成したのは2022年11月。作品はHMD(Oculus quest2)を装着し、音響はライブハウスに5.1chのサラウンド環境を構築して上映する。4K画質の360°VR映像とライブハウスでしか味わえない轟音環境で、リアルのライブを超える新しい音楽・映像体験を目指す。
「コロナで八方塞がりになるなかで生まれた作品ですが、ミュージックビデオでもライブでもない、新しい作品リリースのかたちとしてシーンに一石を投じることになればいいなと今は思っています」(小澤)
かつてレコーディング機器の発達やエレキギター、リズムマシン、ラップトップなどが新たな音楽文化を生み、人種や国籍、イデオロギーの違いを超えて人々をグローバルに繋いだ様に、テクノロジーはそれ自体が新しいものだからこそ、壁を超えて文化を形成できる可能性がある。オワリズム弁慶の活動にも、そんな希望が感じられる。
上映会は11月25日〜27日の3日間、東京都豊島区の「大塚Hearts Next」で行われるので、興味のある方はぜひ体験してみてもらいたい。(詳細はこちら)