物流インフラへの投資
パンデミックに端を発したサプライチェーンの混乱は、適切なインフラの重要性を露呈しました。現在、各Eコマースプラットフォームは、迅速かつ信頼性の高い配送を提供するために、物流インフラへの多大な投資を行っています。
Amazonの年次報告書によると、過去2年間で、同社の設備投資の約30%は物流ネットワークと倉庫のフルフィルメントインフラの改善に費やされました。インフラへの投資には、地域配送センターの拡張や、仕分けセンター、配送ステーション、ラストワンマイル施設など、特定の目的に特化した新しい倉庫の開発などが含まれます。
同社はパンデミックより前に、より多くのプライム商品を1日で配達するために数十億ドルを投資していました。パンデミックによりこの拡張計画は先延ばしされましたが、2021年の年次報告書では、再び軌道に乗ったことを報告しています。オンラインショッピング利用者にとって配送スピードと利便性が重要であることに変わりはないため、こうした投資はオンラインショッピングの継続的な成長を支えることになると考えられます。
中国では、AlibabaとJD.comの両社が物流インフラに多額の投資を行い、中国全土に広がる広大なサプライチェーンネットワークを構築しています。両社はその広範な物流網を活用して、農村部や低所得経済圏のオンライン化と迅速なEコマースサービスの提供を進め、中国におけるEコマースの成長をさらに後押ししています。
・Alibabaの物流部門であるCainiaoは、Tmall SupermarketとTmall Globalにおける中国国内のすべての配送について、ドアステップ配達を保証しています。同社のプレスリリースによると、このサービスにより需要が高まり、Tmall Supermarketの再利用率は2021年7月から2022年7月まで30%上昇したといいます。
・JD.comは、AIと複数のセンサーを使用して航行する数百台の自律型配送車両を配備しています。
JD.comの自律走行型配送車
出典:企業ウェブサイト
中国における政府の動きと規制
中国の第14次5カ年計画の目玉の1つはデジタル化です。AI、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、ブロックチェーン技術などの主要産業への投資を通じて経済のデジタル化を推進し、”デジタル中国”の構築を目指しています。このような経済のデジタル化への注力は、オンライン小売市場の成長を直接的に支えることになります。
第14次5カ年計画の第二の重点項目は農村部の活性化で、農村部や低層都市の経済発展を優先させることを指します。政府はこれを実現するために、これらの地域でのオンライン普及率を高めることを計画しており、中国のEコマースの成長を後押しすることが期待されます。
逆風
経済の不確実性とインフレ
マクロ経済の不確実性と課題は、米国と中国のEコマースの成長にとって逆風要因です。米国では、2022年前半に高いインフレ物価が小売とEコマースの成長を後押ししたように見えましたが、インフレがピークに達したと思われた6月以降、高騰した物価が消費者に重くのしかかり始め、小売総売上高は緩やかになっています。現在インフレは緩和され始めたものの、物価は依然として高く、2022年末にかけてはより慎重な消費が予想されます。
中国では、若者の高い失業率、ゼロコロナ政策、不動産市場の危機が、消費者の生活を脅かしています。その結果、大手Eコマースプラットフォームでは、消費パターンが裁量的な買い物から生活必需品へと変化していることが指摘されています。また、成都などの大都市では最近、中国政府当局が不要不急の商品の配送停止を命じており、同様のロックダウンや自治体からの命令が発生した場合は、Eコマースの成長に影響を与える可能性があるかもしれません。