しかし、2021年には新しく購入した商品の買い替えが減ったため、オンライン売上はわずかに減少し、Eコマースが占める割合は65.5%に減少しました。2022年以降も、短期的には新しい電子製品を買い替える必要性がなく、インフレやマクロ経済の圧迫を感じる限り買い替えを控える可能性があるため、家電製品のEコマースの成長は鈍化することが予想されます。
図2. 米国オンライン小売売上高(フードサービスを除く)、主要カテゴリー別
出典:Euromonitor International Limited 2022/IRI E-Market Insights/米国経済分析局/米国国勢調査局/Coresight Research
中国
2021年の中国のオンライン売上高は11.7兆元(1.7兆ドル)で、前年比19.4%増、小売総額の26.4%を占めました。2022年のオンライン売上高は、ほぼ同様の成長をみせた2020年のロックダウン時と同等の24.3%成長で推測しており、約14.5兆元(2.1兆ドル)、小売売上高の32.9%を占めると予想しています。
図3. 中国オンライン小売売上高(外食含む)
(左軸、兆元/前年比、Eコマースシェア、右軸:小売売上高全体に占める割合)
(図内の訳、コメント「2022年のオンラインシェアは、2020年のロックダウン時と同等の成長があるとみられる」)
出典:NBS/Coresight Research
主なカテゴリー
Euromonitor Internationalのデータによると、中国のオンライン商品カテゴリーで売上が大きいのは、アパレルとフットウェア、家電製品、電子機器、食品と飲料、メディア商品です。ただし、図4では、比較のため、家電製品の代わりに家庭用品と家具を含めています。
Euromonitor Internationalによると、米国と同様に、中国のオンライン売上ではアパレルとフットウェアが最大のカテゴリーであり、2021年には1334億ドル、オンライン小売売上全体(フードサービスを除く)の12.5%を占めたとされています。
また、米国と同様に、家電製品はEコマース売上高で最もシェアの高いカテゴリーであり、2021年の中国における家電製品売上高全体の41.1%を占めています。しかし、2021年のEコマース売上高全体に占める家電製品の割合は6.8%にとどまり、2020年の7.3%から低下しています。
図4. 中国オンライン小売業売上高(外食除く)、主要カテゴリー別内訳
*人民元はEuromonitor Internationalによる「前年比」為替レートを使用して米ドルに換算。
**外食は除く。図3は外食を含む。
出典:Euromonitor International Limited
市場要因
この章では、米国と中国におけるEコマースの成長について、主な追い風と逆風の要因を解説します。
追い風
オンラインショッピングの拡大
パンデミック後の米国では、オンラインショッピングの利用は今後も続くと思われ、将来のEコマースの成長を後押しすると思われます。しかし、店舗での買い物を希望する消費者も少なからずいることから、この傾向は緩和されるでしょう。
2022年9月19日に行われたCoresight Researchの米国消費者動向追跡調査によると、回答者の42.5%があらゆる公共の場を避けていると回答し、ショッピングセンターやモールの店舗全般をそれぞれ21.6%と12.0%が避けているに過ぎないことが分かりました。2022年1月時点では、全体の約70%がショッピングセンターやモールを避け、25%が一般的な店舗を避けると回答するなど、パンデミック時のピーク時、さらには2022年の初めからは大幅に減少しています。
2022年8月15日に行われた当社の米国消費者調査では、公共の場へ買い物に行く消費者が増えているにもかかわらず、オンラインショッピングは依然として人気があり、回答者の約88%が調査前の3カ月間に少なくとも1回はオンラインで買い物をしたことが分かりました。
中国では、Eコマースの普及率が米国よりも高く、2021年の中国国家統計局による調査では26.4%だったのに対し、米国国勢調査局では19.9%となっています。また、中国におけるEコマース普及率は今後も成長を続け、2026年には約40%に達すると予想されています。これは、同国のゼロコロナ政策により、店舗で買い物をすることができず、オンラインショッピングがより快適に利用できるようになったためです。