『電通有志ボラ部』部長が気づいた「ビル・ゲイツが慈善活動をする理由」

日本最古の民間児童養護施設 「福田会」で清掃活動に勤しむ電通有志メンバー(有志ボラ部)

東京都渋谷区。広尾駅から徒歩5分、オマーン大使館隣り、また超高級マンション広尾ガーデンヒルズにも隣接して、日本最古の民間児童養護施設 「福田会(ふくでんかい)」はある。2千坪の敷地に、3才から18才までの子ども達が暮らす。

「福田会」設立は1876年。「貧困無告の児女を収養すべき社団」として今川貞山、杉浦譲、伊達自得の発議により、仏教関係有志を中心に設立された。

厚労省によれば、日本ではさまざまな事情で親と暮らすことができない子どもが約4万2千人いるが、ここで暮らす子ども達はそのうちの46名だ。

「電通」と「福田会」との関わりは2010年に始まったという。かつて、「電通新聞局」が立ち上げた『絵本企画』の一環として、毎年絵本を贈呈していた施設のひとつだった。

初めて福田会を訪れた日のこと、そして、具体的にここで何をしているのかについて、電通「ボランティア部」*代表である電通シニアアカウントディレクター角谷浩氏に以下ご寄稿いただいた。


われわれが初めて「福田会」を訪問したのは、2010年、あの「伊達直人ブーム」のときだった。


児童46名が暮らす、日本最古の民間児童養護施設 「福田会」。都内の高級マンションとして名高い「広尾ガーデンヒルズ」に隣接して建つ

ちょうど群馬県の会社員が、漫画「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」の名で、全国の児童養護施設などにランドセルを贈っていた(自身も幼い頃に母を亡くし、ランドセルを持てず、小学校には「手提げ袋」で通学していたという)ことが話題になった頃である。

当時の施設職員の方とのやりとりを以下ご紹介する。

角谷:伊達直人のブームにあやかって私たちもランドセルを寄贈したいのですが、いくつくらい送ればよいでしょうか?

職員:お気持ちはありがたいですが、それは結構です。いま施設には伊達直人を名乗る人からたくさんランドセルが送られてきて、実は困っているんです。

それに、そもそも昔と違い、今の養護施設に孤児などいません。──彼らが家庭で暮らせないのは、大半はDV(家庭内暴力)が理由なんです。みな服を脱げば、身体にたくさんアザを持つような子どもたちですよ。

この子たちは「大人というのは理由もなく殴ってくるものだ」と心に擦り込まれている子どもたちです。 身体と心に傷を負い、大人をそもそも信用していないわけですから、 知らない大人からプレゼントなどもらっても大切にしないんですよ。

角谷、部員たち: ──(全員絶句)。

職員:もし本当に子どもたちのことを考えてくれるなら、 定期的に施設に来て、まずは体を使って汗を流してください。「世の中にはこんな大人もいるんだ」ということを、 肌身で伝えてくれることが一番の社会教育になります。

角谷:失礼しました、ではランドセルの寄贈はやめます。代わりに、たとえばどんなことから始めればよいでしょう?
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文=角谷浩(電通シニアアカウントディレクター) 編集=石井節子

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