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2022.11.21

D2Cは下火になったのか?「D2C 3.0」マーケティング戦略とは

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猫も杓子も「D2Cブランド立ち上げ」だったこの数年だが、この半年ほどで大きな変化を感じている。「D2Cはもうオワコン」「D2Cは儲からない」との風潮がにわかに巻き起こっているのだ。

果たしてこの風潮は正しいのだろうか。本稿では、D2Cにこれから参入しようと思っている方、もしくは既に参入している方に向けて、今後のD2Cブランドのマーケティング戦略論を述べたいと思う。

そもそもD2Cとは何か?


D2C(Direct to Consumer)は、なにもこの5年で新たに生まれた売り方ではない。ではなぜこの10年ほどで急にもてはやされるようになったのか。

それは、Shopifyに代表されるECプラットフォーム業者が出現したことで、誰もが極めて簡単に自社店舗をオンライン上に出店し、顧客に販売できるようになったからだ。日本においても、BASEやecforceといったサービスが誕生している。

現在、D2Cは「メーカーが中間流通を介さず、自社のECサイトを通じて商品を直接消費者に販売するビジネスのこと」だとされる。要素としては、以下の2つになる。

1. 中間流通を介さず直接販売すること

2. ECサイトというチャネルを通じること

僕は「1」こそが本質であり、「2」はあくまで付随したできごとだと考える。ECサイトという手段がなかった昔は中間流通を介さずに直接販売するのは難しく、参入障壁が高かったのだ。そこにECプラットフォーム業者が登場し、ECで売ることを簡単に実現するエネイブラー(成功因子)となった。

「中間流通を介さず直接販売する」という意味では、ユニクロに代表されるSPAと呼ばれる業態も、れっきとしたD2Cと定義づけられる(もちろん、SPAがデジタル化したものを狭義的にD2Cと定義づける派閥のことも、否定はしない)。

D2Cのメリットは、中間流通マージンを払う必要がないので、事業者にとっては利益率が高いこと。顧客にとっては、メーカーと直接的につながれるので、顧客の声を反映したタイムリーな商品開発が行われることや、パーソナライゼーションを通じた満足感を得られることなどが挙げられる。

デメリットは、顧客獲得のための販管費が非常にヘビーであり、キャッシュで運転資金を厚く持たなければならないこと、付随して事業が拡大するにつけ短期的な赤字を受け入れなければならないことなどがあるだろう。
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文=石井賢介

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