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2022.11.21

D2Cは下火になったのか?「D2C 3.0」マーケティング戦略とは

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「D2C 2.0」の時代には、広告出稿の上手さがキービジネスドライバーであった。つまり、「どう売るか」が勝負の分かれ目だった。また、その派生形としてインフルエンサーが手掛けるブランドも広がった。

しかし、広告に関しては前述した競争の激化によって限界を迎えている。後者に関しては、ブランドがインフルエンサーのファンの数を超えられない(≒売上5億円以上にならない)という課題と、インフルエンサーが年を重ねてしまうという弱点がある。

いずれにしても、これからD2Cで成功するブランドは、広告なんてしなくても人々が自ら使い、自らアンバサダーとなってくれるようなブランドだろう。お金さえ貰えば発信するインフルエンサーによる投稿ではなく、自分の半径10mにいる親しい人間のオーガニックな投稿・リアルでのおすすめが最も購入に影響を与えるようになる。

つまり「何を売るのか」という商品の本質に回帰することが重要だ。「誰がつくったか」ではなく、改めてその商品の持つ「便益の強さ」が評価されるようになる。その便益を強めるための手段として、顧客起点でのパーソナライゼーションが進むはずだ。

この「D2C 3.0」を体現しているようなブランドはまだ少ないが、世界的にみればTESLAが最先端だと言えるだろう。なんと広告宣伝費に掛けている費用は「0」。それでいてTOYOTAよりも高い時価総額を誇り、四半期の利益ですらも逆転してしまった。

日本で言えば、スノーピーク。これまた広告費は「0」である。本社をキャンプ場にし、企業とファンの交流、そしてファン同士の交流をリアルの体験として実現している。スノーピークを購入するきっかけは、「広告を見たから」でも「有名人が使っているから」でもなく、「スノーピークが好きな人が周りにたくさんいるから」なのだ。

他にも、日本のプロテインブランドのVALX、スイスのシューズメーカーのOnなど「D2C 3.0」にシフトして大成功をしているブランドは国内外に出てきている。

「D2C 3.0」は、売り方や手法論が重視された2.0から、再び自社の商品・サービスは「顧客の役に立つか?」という本質に戻ることになる。「最高のものをつくることが最も優れたマーケティングである」と僕は常々思っているが、本当にその時代が来ているのだ。

文=石井賢介

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