イタリアの名門ブレーキメーカー「ブレンボ」が大変身

イタリア大使館で行われたイベントでデジタルアートも紹介された

自動車業界は急ピッチでどんどん変化している。100年に一回の大改革というほど急変している。その変化の基盤にあるのは、電気自動車(EV)、自動運転、そしていわゆる「つながる」(コネクティビティ)などへのシフトだが、その波に乗れる企業と、乗れない企業がある。また、その状況の中で今までの事業を継続させると同時に、ビジネスのスタンスをもっと幅広く、あるいは思い切り変革させる必要のある会社もある。

イタリアのアイコニックなブランド、ブレンボ・ブレーキ社はそういう会社だ。60年前から一般車、スーパーカー、二輪、そしてF1などのレースマシンの高性能ブレーキを手がけていている。ホイールの中に「brembo」のロゴが入った赤いブレーキがあることは、そのクルマが高性能で
あることを意味し、ステータスを与える。しかし、電気自動車が全世界で普及するにつれて、少し危機を感じたらしい。というのは、電気自動車というと、回生ブレーキが働く。つまり、今までのブレーキの需要が減る。

ディスクブレーキの展示

しかし、ここで言わせてもらう。僕から見ると、ブレンボはただのブレーキ・メーカーではない。30年以上、自動車業界で仕事をしてきた僕にとって、ブレンボは特別な存在。同社は60年もブレーキを作ってきた会社だがそれ以上に、スーパーカーやレース界では、ブレンボはなくてはならない美しい存在としてのイメージが根付いている。つまり、ブレンボは普通のブレーキだけのメーカーではなく、まるでブライトリングの腕時計とか、マノラ・ブラニクのハイヒールみたいな高級なアクセサリーに例えてもいいと思う。

それは単に見た目がよいだけではない。ブライトリングが格好良く正しく時間を伝え、やマノラ・ブラニクが美しく品よく安定感良い靴としての役割を果たしているのと同じように、ブレンボ・ブレーキは高性能のクルマに対して、効率が良く抜群の安定感を与え、しかも格好いい。
 
そのブレーキ専門のブレンボが一歩踏み出した。EVに必要なブレーキを作ることにしただけでなく、もっと若者にウケるために、デジタルアートに挑戦したり、会社のロゴを思い切り変えて親しみやすいものにした。確かに、丸くなった新しいBREMBOの文字は、これまでの少し硬かったロゴより若者にウケるらしい。(クルマメーカーもこぞってこのフラットデザインに変更している)。僕のまわりの20代の若者10人に聞いてみたところ、新しいロゴの方が格好いいと100%が答えた。
ロゴの違い
上が新しいロゴ。自動車メーカーはもちろん多くの企業でロゴのフラット化は進んでいる。

先月、ブレンボは新しい試みのひとつとして、デジタルアートを東京のイタリア大使館で発表した。また10月23日から25日の間、ブレンボのビジョンとデジタルアートのつながりを探究したオーストラリア人アーティスト、エイメリック・ドゥ・モーティスによって制作されたデジタルアート作品を、東京都港区三田のブレンボ・ジャパン本社にて一般公開した。

ブレンボは、デジタルアートを通してブランド価値を伝えるたけど、正直なところ、パッと見てだけではその意味がイマイチわからなかった。つまり、今さら、何でブレンボがデジタルアートを出すのか? しかし同社が言うには、この展覧会は、ブレンボのブランド価値と個性を反映したビジョン「Turning Energy into Inspiration」を具現化したもので、デジタルネイティブの若い世代に焦点を当てながら、既存の顧客と新しい顧客の両方を魅了することを目指したイベントだという。なるほど。確かに、これからは若い世代に支持されなければならない。

イベントの様子
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文=ピーター ライオン

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