イ・スンゴンが送金アプリ「トス」で韓国のモバイル決済業界の飛躍に大きく貢献してから7年がたつ。その後、彼はトスの機能を一段と強化して金融サービスのスーパーアプリへと進化させた。急成長を遂げるアジアのフィンテック市場での成功を狙い、同時にグローバル展開という野心的な計画の実行に向けて準備を進めているところだ。
「我々はひとつのアプリで銀行、証券などすべての金融サービスを提供しています。トスならフィンテック業界全体でトップに立てるかもしれないという投資家の信頼を得ています」(イ)
トスを運営する企業ビバ・リパブリカの創業者兼CEO(最高経営責任者)のイは、ソウルの富裕層エリア江南区にあるオフィスでリモートインタビューに応じた。イは現在、2022年第2四半期に100億ドル(約1兆3500億円)を超える評価額で新たな資金調達ラウンドを準備中だ。
「すでに多くの投資家から接触があります」(イ)
今回の資金調達以前にも、14年以降にペイパルやセコイア・キャピタル・チャイナ、シンガポール政府投資公社(GIC)などの投資機関からすでに総額9億4000万ドルを調達している。
リサーチ会社CBインサイツによると、21年6月の資金調達ラウンドでは評価額74億ドルで4億1000万ドルもの資金を調達。ビバ・リパブリカは韓国で最も高い評価額を得たスタートアップ企業となり、今年1月に40歳になったばかりのイをビリオネアに押し上げた。彼は22年の韓国の富豪ランキングに純資産12億ドル、36位で初登場している。
トスは、15年に発表されるとまたたく間に人気を呼び、韓国ではオンライン送金が簡単になった。いまやダウンロード数は2000万回を数え、1100万ものユーザーが、保険加入から融資申請、投資まで、ダッシュボード上のさまざまなオプションを定期的に活用している。
2年前には、韓国以外の国への展開を図ろうと手始めにベトナムに進出。キャッシュ・リワードとデビットカード・サービスが功を奏し、月間300万人ものアクティブユーザー獲得を果たした。その後もイは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポールに事業を展開している。
市場の広大さに疑いの余地はない。グーグルや投資銀行のテマセク、コンサルのベインによる報告書の21年11月版によると、昨年の取引高は東南アジアのオンライン融資部門だけで390億ドルだった。