だがこの地域の、急成長中のフィンテック市場で成功するのは言うほど簡単ではない。シンガポールのビリオネア、フォレスト・リーのシー(Sea)、アンソニー・タンのグラブ、インドネシアのゴートゥーなど東南アジアのハイテク大手がすでに、フィンテックサービスなどのスーパーアプリでトップを目指し、熾烈な戦いを繰り広げているのだ。
ビバ・リパブリカも全力で戦う必要がある。米国のヘッジファンド、タイガー・グローバルが出資するインドネシアのエクセンディット(Xendit)、シンガポール政府系投資会社テマセクやGICなどが出資するシンガポールのニウム(Nium)といったユニコーン・スタートアップもすでに競争に参加している。
鍵となるのは、誰とパートナーシップを組むか。ビバ・リパブリカの戦略責任者ソ・ヒョヌは22年初めにメディアのインタビューで、オーガニックな成長政略を転換し、海外での投資や買収に積極的に乗り出すと述べている。ベトナムでは、資産規模で東南アジア最大の金融機関のひとつであるマレーシアのCIMBグループと提携。21年末には初の海外投資として、米国のスタートアップ投資プラットフォームであるリパブリックの株式を少数だが取得した。
ビバ・リパブリカが世界一のフィンテック企業として成功するには、まず高収益を確保する必要があると、韓国資本市場研究院の金融サービス業界リサーチ担当者イ・ソンボクは指摘する。ビバ・リパブリカの発表では、21年には売り上げが2倍以上の80億ウォン(6億7200万ドル)となったが、積極的な採用とマーケティングのコストがかさんだため、純損失は20年の910億ウォンを上回ったという。利益が出るようになれば、同社が3〜5年後の目標とする上場にも有利に働くはずだ。
「トスはクライアントの数を増やすためのマーケティングに集中してきました。しかし、その戦略では特売品ねらいの客を増やすだけだったのです」
イ・ソンボクはそう話す。
「デジタル・イノベーションの時代には外部資金を引きつけることは容易かもしれません。しかし、トスのビジネスモデルが持続可能でないという評判が立てば、資金をつなぎ留めるために少なからぬコストが必要になってくるでしょう」