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2022.11.10 18:00

中井貴一が考える理想の人生──若い頃は地味に、年をとったら派手に


「思ったのは、日本がいかに恵まれているかということでした。反面、世界から見れば、日本人は極めて脆いわけです。もっとタフにならなければ、世界と伍して戦っていけない。海外に出ていったことで、初めてはっきりとわかった現実でした」

その中井さんの挑戦は見事に実を結びます。作品を観た別の中国人監督から出演のオファーを受けたのです。それが3年後に主演する「鳳凰 わが愛」(2007年)でした。この作品で中井さんは、プロデューサーも務めました。

「昔の自分なら、とにかく失敗することは避けたかもしれませんね」

しかし、中国での経験が中井さんを変えたのです。与えられたチャンス1つ1つを無駄にせず、失敗を恐れずにチャレンジしていかなければ、大きな夢など持てないと知ったのです。そして、それは日本人や日本という国への危機感にも繋がりました。

「これは世代を問わずですが、日本人は元気がないですよね。新しいチャレンジをしようという気概もない。危機意識もあまりない」

思い切って世界に出たからこそ、見えたものがあったのです。

「日本では、手に入れたものを手放すまいと、みんな必死になっている気がします。とにかく失敗だけはしまい、失敗したら終わりだと思っている。でも、生きる価値は豊かさだけにあるのではないと僕は思うんです。やんちゃで自分らしく生きたほうが、みんな面白く生きられるし、日本も面白い国になる」

年を取ったら派手になる


中井さんを取材したのは、ちょうど地方の小さな街での映画の撮影が終わったばかりのときでした。その地方は豊かさランキングでは、全国の下位に位置するエリアでした。ところが、そこに暮らす人は、実に生き生きしていたと中井さんは語りました。

「町で人に出会うと、『慌ただしい東京の暮らしより、もしかしてここのほうが、ずっと幸せなのかもしれないですね』と聞いてみたんです。すると、即座に『はい』と返事が返ってきて。10人に聞いたら、10人全員がそう言うんですよ。驚きました」

素朴な暮らし。人と人のつながり。助け合い、励まし合い、認め合い。豊かさや幸せの度合いを数字的、モノ的、視覚的な側面だけで捉える文化はそこにはありませんでした。
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文=上阪徹

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