1980年代までは、町内会や自治会といった中間組織がうまく機能し、地方議員と住民がリアルに接点をもつ場として政策ニーズを吸い上げることができていた。しかし、2000年代以降、生活スタイルの多様化で20〜40代の中間組織へのアクセスは希薄化。待機児童問題も優先度が低く長年解決されてこなかった。「新しい世代・価値観の人たちにフィットした政策実現のインフラが必要だと思いました」。
生活者の声を政治家に届けるWebサービス「issues」は「生活課題を解決できるプラットフォーム」。個人や民間では解決できない地域の課題を地元議員に直接相談でき、利用する議員は住民の課題を解決してその活動報告を行い支持拡大につなげられる仕組みだ。
issuesは「困り事」を解決することを目標とし、政治的中立な立場を貫いている。論点として提示する困り事も「小学校のプリント連絡をオンライン化してほしい」「災害時にペットを連れて避難できるようにしてほしい」等生活者の課題に特化。なかでも「小学校の欠席届のオンライン化」は、板橋区や大田区などで続々と実現を後押しした。
「issuesで可視化される課題は、既存の政策形成プロセスで上がってくる課題とはまったく違う。これまで議員は子育て世代と接する機会が少なく、悩みを把握しづらかった。issuesを通して要望を知り、行政に働きかけをすることで実現に向かう。社会的責任の大きな事業をやっていると感じます」。
廣田の次の目標は、民間企業や団体のロビイングやルールメイキングの支援サービス拡大だ。現在のルールメイキングシーンでは、イノベーションを起こしたい勢力と、既得権益を守りたい勢力とが競う際、集票力が足りずにイノベーションが起きないままである事例は多い。
「issuesは既得権的・イノベーション的な顧客をどちらも支援し、両方がフラットに有権者の目に触れる状態をつくる。そのうえで政治家が『この社会にとってよい』と信じる方向にかじを切れるような環境をつくりたい」