ビジネス

2022.11.05

利権目的はお断り。パブリックアフェアーズの伝道師

藤井宏一郎 マカイラ 代表取締役CEO

「資本主義のなかに、公共的・社会的な発想を組み込みたかったんです。そういう意味では、いま注目されているステークホルダー資本主義の走りといえるかもしれませんね」

藤井宏一郎はそう穏やかに話す。彼が代表取締役CEOを務めるマカイラは、日本にパブリックアフェアーズ(PA)という概念を浸透させてきた立役者として業界内では知られている。成果として、スタートアップやソーシャルセクターでは、ここ数年でPA専門の組織を設けるケースが増えてきた。

PAとは、企業や団体が事業目的の達成のために行う、公共・非営利分野や社会への戦略的なコミュニケーションを指す。規制領域などでビジネスを手がける企業では、政治家や官僚に政策提言や規制緩和などの働きかけを行うロビイングが一般的。一方、PAでは、これに加え消費者や市民から共感・支持を得るための広報活動やブランディング、CSRまでを含めた活動を行う。事業目的を利益最大化ではなく、社会課題解決にひもづけることで、多様なステークホルダーとの良好な関係構築に取り組むことが特徴だ。

PA専門のコンサルティングファームであるマカイラのミッションは「社会変革の実装パートナー」。2014年の設立以来、利権目的の依頼は固辞し、社会を前進させようとする企業の支援に徹してきた。結果として、デジタル関連を中心に複数の規制緩和にも貢献している。

「キャリアを通じて社会と科学技術の対話をテーマとしてきました」と藤井は言う。科学技術庁での国際政策担当を起点に外資系大手PR会社、グーグル執行役員兼公共政策部長と、政策とコミュニケーションの現場で活躍。たどり着いたのが、「産業界とソーシャル、政治行政、パブリックの全セクターとの対話を深めることが、イノベーションによる変革への社会的な理解を深め、世の中をよりよくする」という答えだ。

創業から8年がたち、PAの重要性を認識する企業は着実に増えている。「公共的・社会的なマインドセットが日本企業のデフォルトになるよう浸透させていきたい。それは、日本の政策形成のアップデートにつながると確信しています」

文=フォーブス ジャパン編集部、写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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