CO2レベル上昇で作物の栄養価が低下、健康への影響懸念も

Getty Images

大気中の二酸化炭素レベルの上昇は植物の窒素濃度を低下させ、作物の栄養価を低下させることが科学誌『Trends in Plant Science』に2日発表された研究で明らかになった。

フランスの植物科学研究所の研究者によると、二酸化炭素濃度が上昇するにつれ、二酸化炭素を酸素に変えて植物にエネルギーを与える光合成が活発になり、土壌中のミネラルへの依存度が低下して、地面から吸収する窒素、リン、鉄の量が減少するという。

窒素が不足すると作物の組織形成が妨げられ、タンパク質の形成過程が遅くなる。これはかなりのタンパク質不足につながる恐れがあり、世界で約10億人に影響をおよぼし、筋肉の萎縮から肝不全、骨の脆弱化までさまざまな症状を引き起こす可能性がある。

米や小麦などの作物は栄養不足の影響を最も受けるため、フランス国立科学研究センター研究員のアントワーヌ・マーティンは、食品の品質と世界の食料安全保障に影響をおよぼすと指摘している。

また、より多くの人が鉄欠乏の危険にさらされることになり、すでに世界で20億人に影響がおよんでいるとマーティンは述べた。

『Nature Climate Change』誌に2018年に掲載された研究によると、2050年までに14億人の女性と5歳未満の子どもが鉄欠乏症になりやすくなるという。さらに1億7500万人が亜鉛欠乏症に、1億2200万人がタンパク質欠乏症に直面する可能性がある。

二酸化炭素の排出量は、48億5000万トンの温室効果ガスが大気圏に放出された1940年以降、着実に増加している。2021年の排出量は前年比20億トン増の363億トンと過去最高を記録し、国連は化石燃料の燃焼によって大気中に流入する温室効果ガス(主に二酸化炭素)の排出量が2030年までに2010年比で10.6%増加すると予測している。こうした傾向により、地球の気温は今世紀末までに2.9度上昇し、深刻な生態学的問題につながると国連は警告している。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事