かつてNATOの脅威だった飛び地防衛のロシア第11軍団1.2万人が消滅

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6年前、ロシア海軍は新たな軍団を結成し、その仕事はカリーニングラードを防衛するためだった。バルト海南岸のポーランドとリトアニアの間に位置するロシアから地理的に離れている飛び地だ。


2022年、ウクライナ戦争がロシアにとって非常に不利になり始めたとき、ロシア政府はカリーニングラードから第11軍団を引き上げウクライナに送り込んだ。そしてウクライナ軍はただちにそれを壊滅させた。

第11軍団の結成、展開そして壊滅は、ロシアのウクライナにおける戦争の悲話以上に大きいことを物語っている。戦略的に重要な海に沿った2つのNATO加盟国に挟まれているその軍団は、ロシア軍に世界戦争における優位性をもたらすはずだった。

実際には、書類上はロシア軍よりも弱いはずのウクライナ軍の砲弾の餌食となった。現在、カリーニングラードはまったくの無防備状態であり、一時はNATOを脅威をもたらした州の部隊は壊滅した。

第11軍団は実際には新たに結成されたものではない。複数の既存部隊を、ロシア海軍のバルチック艦隊に対応する1つの司令部の下に再編成したものだ。同軍団は自動車化師団、独立自動車化連隊、大砲、ロケット、防空中隊および支援部隊を統括する。

ロシアが2月末に始めたウクライナ侵攻を拡大するまで、カリーニングラードには1万2000人以上のロシア軍がいて、T-72戦車100台、数百の戦闘車両BTR、ムスタS自走榴弾砲、およびロケットランチャーのBM-27と BM-30を保持していた。第11軍団はこれらの戦力のほとんどを監督していた。

NATO最弱国の1つであるリトアニアの西側国境を臨む第11軍団は、ロシア が旧ソ連国であるリトアニア、ラトビア、エストニアへの侵攻を想定した金床(かなとこ)だった。そしてかなづちはバルト三国の東側国境に接するロシア西部の1万8000人の強力な地上部隊だった。

NATOはカリーニングラードの増強ぶりを注意深く見守った。「カリーニングラードは間違いなく、歴史的に、私たちがその変化と微妙な地域的情勢に十分注意を払ってきた場所です」と6月に匿名の米国国防省関係者が記者団に語った。

そうした力学は2月に劇的に変わった。ロシア政府は地上部隊の80%をウクライナ侵攻拡大へと差し向け、その大部分をキーウ占拠を目指した絶望的な戦いでたちまち失った。

首都へと続く道に沿って配置された、貧弱な統率と補給不足のロシアの大隊、旅団および師団は、ウクライナの大砲、無人機、 精度の高い対戦車ミサイルを装備した歩兵部隊らの攻撃の前に無力だった。
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翻訳=高橋信夫

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