日本橋の分身ロボットカフェで働く「オリヒメ」、パイロットの意思で作動

「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」が東京・日本橋エリアにオープンして1年が経った


社会経験がなくても。分身ロボットで心理的安全性を担保


そんなオリヒメを活用したカフェ「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」だが、なぜ外出困難者の活躍の場をカフェにしたのだろうか。そして、社会経験の少ない外出困難者が、いきなり接客を伴う働きをすることは可能なのだろうか。

「特別支援学校などを卒業したての方々は、アルバイト未経験者も少なくありません。そのため、社会経験が少なくても業務内容が想像しやすい“カフェの接客業”を設定。まずは“ドリンクを運ぶ”などのイメージしやすい仕事から始めてみることになりました。

接客面に関しては、接客業に向いているか面接でコミュニケーションスキルを見た上で、まずはご本人の意欲を重視しています。採用後も接客とコミュニケーションの研修をしています。もし、業務でミスが発生した際、パイロットはオリヒメを介してごめんなさいのポーズをしたりして気持ちを表現することができます。お客さんにとって、それがどこか愛らしく感じられたりもするようです」(濱口氏)

また、オリヒメはコミュニケーションを図るロボットのため、このカフェの業務では「客と話をする」ことがメイン。客がオリヒメを介してオーダーした後、メニューが届くまで会話をしているという。

初対面の客としばらくの間話さないといけないのは、たとえ社会経験が豊富でも難しい。ところが、外出困難者であるパイロットたちは、意外にも会話が弾んでいることが多いという。

「生身の人間相手だと緊張してしまうところ、お客さんからしたらオリヒメしか見えないので、ロボット相手で話しやすいようです。パイロット側も心理的安全性を担保されているなかで話せるので、楽しく話せるのかもしれません」(濱口氏)

また、ロボットなのに失敗する可能性があるところもオリヒメの人間らしい魅力のひとつ。

「AI搭載ロボットならミスなどないのでしょうけど、オリヒメはあくまでも人が操作しているのでミスも発生します。配膳テーブルを間違えたり、コーヒーの粉をこぼしたりして、慌てているロボットの様子がどこか人間味があり、その様子を見たお客様も楽しそうなんです。

ロボットは完璧なイメージがあるからこそ、イレギュラーなことが発生した際にはトラブルがショーに変わるんですよね。ですから、接客がそつなく終わるとエンジニアとしては安心だし満足だけど、お客さんはなんだか普通だよねという感想を抱かれる。ミスをしないに越したことはありませんが、とてもハートフルなカフェになったと自負しています」(濱口氏)

このように心理的安全性が担保されている中、パイロットは失敗したり学んだりしながらコミュニケーションスキルを上達させていく。最近では、そのコミュニケーションスキルを買われ、客として来店した経営者にスカウトや引き抜きをされるパイロットも増えたという。

「和歌山のアドベンチャーワールドのレストラン入り口で、ご案内業務をするパイロットや、大手企業の受付をするパイロットなど、オリヒメを介してカフェの店員以外の活躍の場を広げているパイロットも増えました。外出困難者の可能性が広がっていくのを嬉しく思います」と濱口氏。

現在在籍するパイロットは70名以上。同カフェで働きたいと思っているパイロットはまだまだ多く、全て採用することは難しいのが現状だ。濱口氏は「SDGs観点でオリヒメを活用してくれる企業も多いのですが、コロナでオフラインでの交流が憚られる今こそ、もっとオリヒメで働くことを視野に入れてもらえたら」と話す。

コロナ禍でリアルの価値が上がったが、アフターコロナになっても外出困難者の状況は変わらない。オリヒメはそんな人たちの、希望の星として今後も活躍していくに違いない。

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