脱炭素はビジネスチャンスにもなる
3つめのキーワードが「気候変動対策」である。
15年の第21回気候変動枠組条約締約国会議で採択された「パリ協定」(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)を機に、世界各国で脱炭素に向けた取り組みが進められている。日本は20年10月に、菅義偉首相(当時)が所信表明演説で国内の温室効果ガスの排出を50年までに実質ゼロにする方針を打ち出し、企業にも脱炭素社会の実現に向けてあらゆる対策が求められるようになった。
気候変動は人類や地球環境にとって脅威なだけでなく、企業の成長や持続可能性にも大きな影響を及ぼす。脱炭素に向けた具体的な戦略を描き、実行に移さない企業は早晩、投資家や取引先企業、一般消費者などから支持を得ることが難しくなるだろう。一方で、気候変動対策という世界規模でのゲームチェンジが新たなイノベーションや投資の機会を創出しているのも確かだ。
気候変動対策は「ステークホルダー資本主義ランキング」の「地球」の指標にも一部含まれているが、上記で述べたように、大企業のサステナビリティを左右する最重要課題のひとつである。そで、気候変動対策に焦点を絞ったランキングを作成した。
同ランキングの算出に当たっては「売上高あたりのGHG排出量」「再エネ使用率」など計10指標を用いた。スコアリングの結果、1位は化学メーカーの信越化学工業となった。カーボンニュートラルに貢献する製品を数多く製造するとともに、サプライチェーンの脱炭素化も推進している点などが評価された。
ランキング算出方法
調査対象は東証プライム市場の1839社。2022年7月1日時点で取得したデータを基に、サステナブル・ラボが解析。
「人的資本」スコアの算出には「従業員1人あたりの人件費」「従業員1人あたりのキャッシュ・フロー」「従業員満足度」など計16指標、「ダイバーシティ度」の算出には「女性従業員比率」「取締役の年齢差」など計16指標、「気候変動対策」の算出には「売上高あたりのGHG排出量」「再エネ使用率」など計10指標を用いた。
業種ごとの相対評価で指標スコア(偏差値)を算出したのち、各指標に対してテーマや業種のマテリアリティを基に重み付けを行い、最終スコアを算出した。同スコアの場合は小数点第二位以下の数値により順位を決定した。