経済・社会

2022.10.20 08:45

欧州のエネルギー危機をそこまで悲観しなくてよい理由

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ロシアや、ロシアが今冬、欧州へのエネルギー供給を停止するという脅しをめぐって、不安の声が多く聞かれる。ロシアは「保守点検」を口実に、ウクライナを経由する天然ガスパイプラインの稼働を止めるかもしれないのだという。

だが、これは文字通りこけおどしだ。あまりに見えすいた脅しであり、真に受けることはできない。

そもそも、欧州は天然ガスの過半(55%)をロシア以外から調達している。40%は海上輸送される液化天然ガス(LNG)で、15%はアフリカからパイプラインで送られている。残り45%がロシアからの輸入だが、この分野に詳しいマックス・ピジアーによると、このうちウクライナ国内のパイプラインを経由する分はごく一部にとどまるという。

また、欧州は域内の天然ガス生産量が2013年以降徐々に減ってきている半面、ロシアからの天然ガス輸入量も今回のウクライナ侵攻の2年前にさかのぼる2020年から、急激に減っていたという点にも留意しておくべきだ。

さらに、ロシアの侵攻後、欧州諸国はLNGの輸入を増やし、貯蔵施設には在庫がたっぷりある。欧州が冬を越すには十分な量の天然ガスが確保されているということだ。

ただ、ガス料金は今後も高止まりするだろう。戦争前の昨年10月に1メガワット時あたり94ユーロ(約1万3800円)だった欧州の天然ガス価格は、最近は113ユーロまで上がっている。欧州ではこのところ例年より暖かいが日が続いているものの、油断は禁物だろう。寒波が到来すればガス代はさらに上がるおそれがある。

それでも、より大きな打撃を受けるのはおそらく、財政を石油・ガス収入に依存するロシアのほうだろう。

欧州は今回の危機によって、より慎重なエネルギー調達の必要性に目覚めた。欧州諸国を顧客として当てにできなくなったロシアは、中期的に苦しい立場に追い込まれそうだ。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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