間伐材を積極活用 東京育ちのサーファーが日本の森にこだわる理由


森を思い、顔を曇らすサーファー


日本では、戦後に復興資材用として木材需要が急増。木は大量に伐採されていった。のちに植栽されたものの、使える状態に育つまで数十年という長い時間を要する。その間の需要を満たす名目で木材の輸入が解禁され、その量は年々増えていった。

一方、国内の木材需要量のうち、国産が占める割合を示す木材自給率は減少の一途に。2000年には2割を下回る壊滅的な状況に陥った。

それでも近年、自給率は上昇傾向にある。輸入量の減少やバイオマス発電の燃料としての活用、林野庁をはじめとする活用促進の声の高まりから、’20年には約半世紀ぶりに40%台にまで回復した。

“森を豊かにすることで海を豊かにし、ひいては人の暮らしを豊かにする”という連鎖においては紛れもなく明るい変化だ。加えて環境意識の高まりという時代の流れも重なって、フロンティアジャパンの業績は年々上向いているという。

それでも「はたして日本の森について知る人はどれほど増えたでしょうか」と安藤さんは問い、「農業や漁業は生活に直結するからニュースになりやすい。けれど森、いわば林業も生活に直結しているのですがニュースになりづらい。そのため多くの人には現状が届きづらい。そこがもどかしい」と顔を曇らす。

「そのような思いもあって弊社は全国の森林組合とつながりを築き、企業に『販促品や記念品を作るのなら日本の間伐材を使いましょう』と営業をしてきました。企業には社会貢献活動としてのCSR活動があり、以前は植林をする企業が多くありましたが、日常的にSDGsやサステナブルが叫ばれる今の時代ではその先の活動が求められていますから」

これまでの取引企業は大手企業やファッションブランド、スポーツブランドを含めて100社を超える。ハイセンスなノベルティや、日常的に使える贈答品を通し、受け取った人たちに“木”に着目してもらえたら。

そして、森は二酸化炭素を削減するとか、海は酸素を供給するといった環境問題という高所からではなく、もっと気軽に“毎日の暮らしと森はつながっている”ことを多くの人に知ってもらいたい。

そのように強く思い、安藤さんは今日も森へ赴き、ときに談笑を交えながら、森林組合の人や林業従事者たちと情報交換を行っている。


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(この記事はOCEANSより転載しています)

写真=Char 編集・文=小山内 隆

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