都市そのものがクリエイティブをドライブする 森ビル x teamLab Borderless

都市を舞台にアーティストが表現を展開する。森ビルの仕掛ける大規模都市開発には、クリエイティビティを刺激する豊かな思想がある。その中心で活躍する森ビルの杉山央に、新プロジェクト「虎ノ門・麻布台プロジェクト」で再始動する「teamLab Borderless」について聞いた。

杉山 央(森ビル)インタビュー
聞き手:黒澤浩美(金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター)


黒澤浩美(以下、黒澤):「teamLab Borderless」(【Forbes JAPAN 2022年10月号別冊】)拝読しました。「teamLab Borderless」は日本のアート史上、ひとつのターニング・ポイントになった出来事だったかと思います。今年8月に、惜しまれつつお台場では一旦閉館しましたが、次のフェーズに進む森ビルとチームラボの描く「未来像」についてお話を伺いたいと思います。杉山さんから見て、「teamLab Borderless」出現のビフォーアフターについて、どのような所見をお持ちでしょうか。

杉山 央(以下、杉山):おかげさまで、世界中からの多くの反響をいただくことができました。「teamLab Borderless」は初年度230万人ものご来館があり、50%が海外客でした。うち、アンケートでは半数が「当館のために東京に来た」という結果がありました。世界に誇るミュージアムを東京につくりたい、という当初からの目標は達成できたんじゃないかと感じています。

開業までのスケジュールを振り返ると、3年前の2015年にチームラボとの話がスタート、16年に本格的にプロジェクト始動、そして18年に開業というタイトなタイムラインでした。話をスタートした時点で、「必ず成功する!」という気持ちをもっていました。チームラボのアーティストとしての可能性を信じていたからです。ただ、大きな投資も伴うため調整には多大な時間と労力を費やしました。「teamLab Borderless」は1万平方メートルの巨大なミュージアムで、中に入ると床、壁、天井すべてに映像が映し出され、お客さまご自身が作品の一部になります。あえて順路は設けず、むしろその順路のわかりづらさを体験として提供しました。そんなミュージアムはこれまでには無かったので、イメージすることが難しかったのだと思います。

黒澤:自分が想像できるのは、既に知っていることか見ていること。そこがある意味では限界ですものね。新しいことに挑んだパイオニアとして、森ビルのなかで関係者の理解や説得にこぎつけたポイントやキーワードは何だったのでしょう。

杉山:森ビルは「東京を世界一の都市にする」という強いヴィジョンをもち、都市づくりに取り組んでいる会社です。国際都市間競争を勝ち抜くためには、世界から人・モノ・金・情報を惹きつける、磁力ある都市・東京を実現しなければならない。そのためにはニューヨークやロンドンに匹敵するような総合的な魅力が必要ですが、東京は文化の分野に弱点があります。そのため、森ビルは世界に誇れる文化発信拠点をつくり、東京の文化分野の魅力向上に貢献したいと考えています。

ニューヨークにMoMA(ニューヨーク近代美術館)、パリにルーヴル美術館があるように、世界の上位都市には重要でインパクトのある美術館があります。森ビルも、六本木ヒルズで森美術館を手掛けていますが、それに加え、「teamLab Borderless」といういままでにない全く新しいミュージアムをゼロから手掛けることで、東京の文化の力をさらに向上させることができるんだと訴え、社内の理解を集めていきました。チームラボは海外では既に活躍していましたが、東京に常設の拠点をつくることで、世界の人々を惹きつけることができるのではないかと考えました。
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text by Hiromi Kurosawa | Photograph by Shuji Goto | edit by Yasumasa Akashi

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