「私自身、医者ではないので彼らの悩みはわからないということを痛感しました。でもゼロから考え直すと、結局自分が研究していたころに一番苦痛を感じてたことがニーズなんだと気づいたんです」
直感的にニーズがありそうな部分にフォーカスして走り始めたが、将来を描けていなかったというグライムス。漠然としたアイデアだけでなく、どの順番でどんなユーザー層にサービスが広がっていくのかを最初のフェーズで考えておくべきだと話す。
対応策:「やっていること」を信用せよ
事前ヒアリングなどで得た意見だけで判断すると、実は違ったということが多くある。人が「言ったこと」ではなく「やったこと」、「やってから出た意見」を信用すべきだ。
実体をともなうものへの意見は改善案につながるものが多い。最後に判断するのは起業家自身だが、何を信用するかを見極めよう。
あるある2:書籍の情報で知ったつもりになる
会社立ち上げの準備段階で、起業家向けの本を読み漁る人も多いだろう。しかし「経験しないとわからないことも多々ある」とグライムスは話す。
「起業前にはあまり書籍に触れなかったんですが、今、走りながら読んでます。ただ、起業家向けの本を読むと『当たり前のこと言ってるじゃん』と思う。でも実際には同じように失敗してしまうんです(笑)ハマってるなと思いつつ、失敗も多いですね」
知識として知っていることと、自分がその立場になって実践できるかどうかは、全く異なる。「経験していないことは、知識を持っていても失敗してしまう」とグライムスも言う。
ただ、起業に関わるスキルの不足を感じてもいたという彼女は、こう振り返る。
「起業後に初めて『勉強も必要だな』と実感しました。もっと先輩起業家の話や、成功失敗の事例を聞くべきで、もっと本を読んでおくべきだった」
これは「知識があれば失敗を未然に防げる」ということではない。「知識があるため、失敗に早く気づける」のである。起業のスキルが足りないことに気づくと同時に、グライムスは「失敗してハマった時に一緒に笑ってくれるメンバーがいてくれることが大事」ということも実感したそうだ。
ひとりで起業し、すべての行動と責任を自分自身が背負うこともあるが、頼れる仲間がいる安心感や業務を分担することでの負荷軽減は想像以上にプラスになる。メンバーができて楽になったというのは筆者自身も日々実感することだ。