ここまでいくと、むしろ、景気後退が起こらない2%の可能性を支える根拠が気になってくる。ありうるシナリオとしては、利上げの終了と、ウクライナにおける戦争が停止することだけだろう。
ネッド・デイビス・リサーチは、9月28日にこの市場予測を発表している。
欧州連合(EU)がパイプラインを通じたロシア産天然ガスの禁輸措置を敷いたこと、また、先日バルト海のノルドストリーム・パイプラインが損傷したことを受け、EU圏内のエネルギー価格は高騰している。これにより、ビジネスは打撃を受け、金利は高止まりすると予想される。欧州はすでに景気後退に陥っており、米国よりも悪い状況にある。JPモルガンとゴールドマン・サックスは、こうした予測を過去3週間以内に相次いで発表している。
ロシアは、ウクライナを経由した欧州への天然ガス供給を削減する可能性が高い。また、先日ロシアが行ったウクライナの首都キーウ等へのミサイル攻撃で、ウクライナの発電所が損害を受けたため、ウクライナは、欧州への電力輸出よりも、国内の電力需要を満たすことに力を入れるだろう。こうした理由で、欧州に限れば、景気後退に陥る可能性は100%だ。
景気後退の兆しと、リスク選好型投資の再燃
FF(フェデラル・ファンド)金利先物は、127.5bp(ベーシスポイント)の追加利上げを見込んで値が付けられている。これは、連邦公開市場委員会(FOMC)が12月末までにあと2回の会合を開催するなかで、FF金利を、現在の3.25%から4.5%程度まで上昇させると見られることに対応した値付けだ。
FF金利は、大手銀行が相互に貸し借りする際の金利であり、小売業者が支払う金利ではない。住宅ローン金利は、この約2倍になるだろう。連邦学生ローンプログラムに追加の金利補助がない限り、学生ローンのコストも上昇する。
ウォール街にとっては、委託証拠金コストの上昇を意味する。証拠金取引をおこなっているファンドは、証拠金を付けた購入を削減し、全体として証券の需要は低下するだろう。
金融市場の脆弱性が局所的に露見している現状や、インフレに対する連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢を考慮して、投資家たちはいまや、利下げよりも利上げに賭ける方が確実だと考えている。
数カ月前までは、景気後退のなかでFRBが引き締めを続けるはずがないという見方がウォール街の主流を占めていた。だが、2022年前半にFRBのインフレ対応が遅れた結果(元FRB議長で、現在は財務長官を務めるジャネット・イエレンは、インフレは「一過性」だと述べていた)、FRBはいまや、成長か、インフレ抑制かの二者択一を迫られている。