コロナ禍でスタートしたにも関わらず、会員は順調に増加。オランダに移住してまだ3年ほどだが、自身も国際試合に出場し、他国の道場から指導の依頼を受けることもあるそうだ。海外にいるからこそ感じる空手の魅力、そして普及に尽力する理由とは?
オランダのアムステルダムで空手道場を運営する松澤成基氏。実家は空手道場を運営しており、子供の頃から生活の一部に空手があった。
高校、大学と空手の名門校に進学。大学卒業後は、教員や警察などに就職する部員が多いなか、トレーナーの道を志した。専門学校に通い、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師の4つの国家資格を取得。地元で整骨院を開業することも考えたが、縁あってオランダに移住することになった。
「麻布で店舗展開をするループル治療院の代表から、『アムステルダムに治療院を作るんだけど、よかったら行ってみない?』と誘っていただいたんです。フリーランスのマッサージ師が集まってチームを組むことになりました。自分でフリーランスビザを取得する必要はありましたが、チャンスだと思い飛び込みました」
オランダについてよく知らないまま、半年後には日本を離れてアムステルダムに。しかし移住してから1年後に、コロナ禍が街を襲った。度重なるロックダウンと営業制限から自宅で過ごす時間が増え、前々から考えていた空手道場を始めようと決意した。
「実家が空手道場なので、物心ついた頃から空手は生活の一部でした。プレーヤーとしてだけではなく、指導にもずっと関わってきたので、空手道場を始めることは僕にとっては自然な流れだったんです」
空手は、世界で1億人以上の愛好家がいると言われる。オリンピック競技にもなり、世界各国から強豪選手も生まれているが、空手はどのようにヨーロッパで受け入れられているのだろうか。
「私が運営する成拳空手道場には、子供から大人まで、年齢も国籍も様々な生徒が在籍しています。親御さんが子どもに空手を習わせたい理由で多いのは、心身ともにたくましくなってほしい、礼儀作法を身につけてほしい、などですね。ハーフのお子さんを持つ親御さんは、空手を通して日本語や日本文化を身につけてほしいとおっしゃっていました」
近間で打突と蹴りを繰り出す空手は、一瞬の判断が勝敗を分ける。このため特に判断力、集中力が身に付くという。
さらに、空手をはじめとした武道は礼節と人間形成を重視する。大きな声での挨拶、相手を敬う姿勢、礼、所作など、「人としてのあり方」や「心のあり方」を稽古を通して常に問いかけている。