30U30

2022.10.17 08:45

やらない理由を探すのではなく「見る前に跳べ」|暦本純一

30U30のアドバイザリーボートを務めた暦本純一

30U30のアドバイザリーボートを務めた暦本純一

2本の指で画面を拡大・縮小する。スマートフォンを操作するとき、私たちが当たり前に行っている動作だ。ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一は、このマルチタッチシステムSmartSkinと呼ばれる技術を20年前に発明した。

暦本はほかにも、世界初のモバイルAR(拡張現実)システムNaviCamなど、デジタルの世界を変え得る技術を発明。現在も、東京大学情報学環教授やソニーコンピュータサイエンス研究所副所長などを務める傍らで、新たな技術の研究に取り組む。

Forbes JAPANが“30歳未満の30人”を選出するアワード「30 UNDER 30」のアドバイザリーボードを務めた暦本に、自身を形づくってきた経験を踏まえて、未来をつくる若者たちへのアドバイスを聞いた。

やりたいことができる人とできない人の違い


──グローバルで活躍していく若者に共通するのは、どのような点だと思いますか。

やりたいことを自分でどんどん始めていることですね。インターネットさえ使えれば、知識はどんどん吸収できますし、表現や発表の場としても活用できます。学校で学んでいるかどうかなどはあまり関係がなくて、何歳からでもやりたいことを始められる時代です。

つまり、やりたいことができる人とできない人の違いは、単純に始めているかどうかになってきています。

今年の30 UNDER 30を受賞したフア・カンルさんもすごくアクティブな方です。彼はAI技術を用いた歌声合成ソフトを開発しているのですが、最初は見よう見まねでプログラミングを始め、ほぼ独学で会社を立ち上げるところまで技術を高めたそうです。実行力や吸収力が優れていますよね。

──暦本さんご自身は、夢を実現するためにどのような努力をしてきましたか。

私は小学2年生のころに大阪万博で初めてコンピュータに触れ、これは面白いと思いました。将来は絶対にこれに関わる仕事をしようと、とりあえず教科書を買って、NHKのコンピュータ講座を見て、動かす実機もないままに、方眼紙にプログラムを書いていました。

当時は家にコンピュータもなければインターネットもなかったので、情報を集めるためには書店に行くしかありませんでした。コンピュータが一般社会ではまだ縁遠い時代に、いきなり「コンピュータの教科書がほしいです」という小学生に親切に本を選んでくれた書店の方にはいまでも感謝しています。
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文=三ツ井香菜 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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