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2022.10.15

皮膚ガン検査に革命を起こすスタートアップ「DermTech」の挑戦

Getty Images

John Dobakは、1990年代にガンなどの病気を発見するゲノム検査について知り、その進化に注目してきた。しかし、それを手軽に利用できる診断ツールにできた者はほとんどいなかった。彼は、2011年に皮膚ガンの1種、メラノーマのゲノム検査に着目し、より使いやすい検査法の開発を思い立った。

従来の皮膚ガン検査には、痛みを伴う生検が必要だったがDobakは、それを不要にする粘着シールを開発した。そして、彼は友人や家族から資金援助を得て、2017年にカリフォルニア州本拠のスタートアップ「DermTech」を設立した。

「数十年に渡るメラノーマの研究により、遺伝子に変化が生じていることがわかった。それを見ることができれば、ガン化したかどうかを判断できる」とDobakは話す。

しかし、皮膚科医たちはDermTechのアプローチに懐疑的で、製品の導入をためらったという。Dobakによると、患者よりも皮膚科医と保険会社の説得に苦労したという。

DermTechの費用は一部の保険会社やメディケアでカバーされているものの、より広く利用できるようにするためにはやるべきことがまだ多い。同社は、同社の検査が保険適用外であった場合、患者に代わって保険会社を説得し、カバーするよう促している。患者は、DermTechのウェブサイト上からこのレターの発送を依頼することができる。

Dobakは、DermTechが診断を向上させるだけでなく、医療システムにとって有益だと主張する。彼によると、毎年約20万人がメラノーマと診断されているが、診断のために行われている生体検査は400万件以上にのぼるという。「医師はメラノーマを見逃したくないため、抵抗があっても検査しているのが実情だ」と彼は言う。

このことは、多くの人に不快な生検を強いるだけでなく、医療システムのコストを高めている。従来は、1回の検査に1200~1400ドルの費用が掛かっていたが、DermTechのシールであれば、患者の自己負担額は平均75ドル以下で済む。

DermTechの粘着シールは、ゲノム検査に必要な表皮細胞を十分に採取できるため、皮膚を切り取る必要がない。メラノーマは、早期発見によって完治が可能なガンの1つで、実際、99%の症例が治癒可能だ。
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編集=上田裕資

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