──現代のビジネス社会への示唆とは
伊藤:新しいルールが成立するためには、イノベーションを背景に超コアなファン層を作るのが一つの戦略だろう。その成功例がフランスの自動車産業だった。例えば、最近、同じ方法で成功しているのがドローンだ。いくら危ないと批判があっても、コアなファン層が存在すると、どのように航空法と「両立」できるかという議論になる。絶対的な信者がいるiPhoneもそうだし、電動キックボードなども、道路交通法の区分を変えようというところまできている。いかにコアなファンの興味を喚起できるかが非常に重要だ。
ルールには寿命がある。誕生後にチューニングされ、普及していくうちに必要性や妥当性が変化し、規制も生まれてくる。一定期間を経て時代遅れになるルールは、やがて発展形となり新しいルールが誕生する。この繰り返しでルールは変わっていくのだ。
──日本のルールメイキングの特徴は
伊藤:日本を含むアジア圏は農耕社会の歴史があり、共感や団結が重要だった。例えば、水田を守るため地域社会で役割分担し、それぞれの立場で協力しあってきたように、互いにコミュニケーションをツールとして何かを生み出す、コラボレーション型と言えるルールメイキングは昔から行われていた。
現代のイノベーション社会では、オープンイノベーションなどによる協調が重要になっている。法律よりガイドラインのような中間型の規制形態が望まれるため、コラボレーション型がより有効となるだろう。
伊藤 毅◎弁護士。1971年生まれ。外資系法律事 務所を経て、ルールメイキング、スキームメイキン グに特化したフレックスコンサルティングを創設。2022年にルールの誕生から現代における変化を紐解く「ルールの歴史」(日本経済新聞出版)を上梓。