2022年8月には、同州で干ばつが起きて気温が急上昇した。あまりの暑さに、1200年ぶりの深刻な熱波だと言う専門家もいたほどだ。その結果、カリフォルニア州の穀倉地帯を中心に、250カ所の井戸が干上がってしまった。
カリフォルニア州では2022年に入ってから、それら250カ所を含む1100カ所以上の井戸が枯渇。2021年比で60%も増えた。同州には全部で27万4000カ所に井戸があることを踏まえれば、大した数ではないと思うかもしれない。しかし、清潔な水を入手するのに苦労している100万人もの州民にとっては不吉な兆候であり、個人的に悲惨なことでもある。
水不足に見舞われて苦しんでいるのは、社会で最も弱い立場にある人々だと指摘するのは、非営利団体「Union of Concerned Scientists(憂慮する科学者同盟)」で水と気候の研究に取り組むシニアサイエンティストのホセ・パブロ・オルティス=パルティーダ(Jose Pablo Ortiz Partida)だ。
セントラル・バレーで水不足の影響を受けている住民の大半は農作業従事者だ。その多くが移民か、公的な身分証をもたない。
セントラル・バレーにおける井戸水の枯渇は、問題のごく一部にすぎない。たとえば、カリフォルニア州フレズノ近くに位置するカラザーズでは、住民が利用している水はたいてい、ヒ素、硝酸塩、農薬や発がん性のある物質が含まれていてひどく汚染されており、飲むことができない。
カラザーズのほかにも、セントラル・バレーに点在するカントゥア・クリークやマテニー、トランクィリティーといった小さな町ではたいてい、水がトラックで運ばれてくるため、住民は水のために必要以上の負担を強いられている。そうした町は、どの地方自治体にも属していないため、サンフランシスコやロサンゼルスなどの大都市とは違って、同水準の水道料金にしてほしいと交渉することができないのだ。
オルティス=パルティーダは米Forbesに対し、「そうした町に住む家族の多くは、自宅にエアコンがない」と語った。「夜は暑さで寝不足になり、早朝に働き始めても、午前9時にはすでにものすごい暑さになっている。果樹農園には日影があまりない。農作業従事者のなかには、1日を何とか耐え忍ぶために、大きな水のボトルを9本も持ち歩かざるを得ない人もいる」