住民が苦労する一方で、作物は十分に水を得ている。セントラル・バレーの灌漑が整備された農地面積は米国全体の17%を占める。そうやって引かれた水を使って、およそ200億ドルもの価値がある250種以上の作物が栽培されているのだ。最も多いのが穀物、干し草用の牧草、綿、トマト、野菜、かんきつ類、果樹、ナッツ、食用ブドウ、ワイン用ブドウだ。
米国全体の地下水需要のうち、およそ20%がセントラル・バレーの帯水層からくみ上げられている。米国地質調査所によれば、セントラル・バレーの帯水層からくみ上げられている水の量は、米中西部ネブラスカ州のオガララ帯水層に次いで2番目に多いという。オガララ帯水層もやはり、枯渇の危機に瀕している。
カリフォルニア州は目下、干ばつ支援に7億5000万ドルを計上している。そこには、井戸が完全に干上がってしまった住宅に貯水タンクを設置するための緊急計画資金も含まれている。しかし最近は、サプライチェーンの遅延により、貯水タンクの提供が何週間も停止されたままだ。
水不足の脅威が解消される様子はない。セントラル・バレー南部のサンホアキン・バレーだけでも、2040年までに4000カ所から1万2000カ所の飲料水用井戸が、一部もしくは完全に干上がってしまうと予測されている。そうした事態で影響を受ける人は12万7000人に上ることが、米国の公益法人ウォーター財団が2020年に実施した調査で明らかになった。
過酷な気候変動と戦うための資金を豊富に有しているのは、農作物を生産する大手企業だ。水へのアクセスという点では、大手企業が所有する井戸のほうが、地域や各世帯に設置された井戸よりも深い。それに、電動ポンプを設置する資金があるため、より深いところから水をくみ上げることができる。
カリフォルニア州にあるポモナ・カレッジで、環境解析と環境史を研究する教授チャー・ミラー(Char Miller)は米Forbesに対し、「私たちが口にする食料を現場で育てている人たちが、甚大な影響を被っている」と語った。
「カリフォルニア州における水の歴史には常に、最大の取り分を手にして、それを維持しようとあらゆる手を尽くす大企業が関係してきた。そこには極めて大きな不公平が存在している」
(forbes.com 原文)