お客さまを守るためには訴訟も積極的にサポート
堤は企業賠償の世界で研鑽を積んだその道のプロフェッショルだ。2009年からは専門チームに加わり、現在はチームを率いる立場にもなった。
そんな堤が担当する保険の中にD&O保険(会社役員賠償責任保険)がある。例えば、経営者などの役員が株主などから経営責任を問われて訴えられるようなリスクに備えるもので、近年、役員の責任を追及されるケースが目立つようになったことからニーズも高まっている。堤のチームの陣容も現在は当初の3倍に拡大した。それだけ契約数が増加しているということだ。
会社の役員が損害賠償請求を受けた場合、損害保険会社は弁護士費用を支払いながら損害賠償額がどれくらいになるのかという適正性を見極めて、保険金支払いの準備を進めながら、訴訟の経過を見守っていくというのが一般的な対応だ。しかし、私たちの仕事はそれだけにとどまらないと堤は強調する。
「私たちはただ見守るだけではなく、積極的にお客さまを支えていきます。もちろん、訴訟を実際に担当するのは、お客さまの委任した弁護士が中心となりますが、我々にもグローバルで蓄積した知見や法律家とのネットワークがあり、事案に役立つ理論や論文、判例等をお客さまが十分に主張反論出来るように積極的に提供してサポートするのです」
堤がここまで「お客さまを支える」ということにこだわるのは、ある忘れられない経験があるからだ。D&O保険を担当するようになってすぐ、ある会社の役員らが株主から保険の限度額をはるかに超える巨額の損害賠償請求訴訟を提起された事案だった。役員が自ら選任した弁護士が訴訟対応していたこともあり、堤はセオリー通り保険金支払いの準備を進めながら訴訟の経過を見守っていた。結果は、一審で全面敗訴判決が言い渡され、高裁、最高裁でも覆らず、役員らの全面敗訴が確定した。堤は保険金だけでは賄いきれない巨額の債務を負った役員らを目の当たりにし、本当にこれで良かったのか遣る瀬ない思いを強く感じた。
「セオリーでは訴訟の経過を見守るのが正しいのかも知れませんが、被保険者を真にお守りするためには、単に訴訟経過をモニタリングするだけではなく、AIGの持つ知見やネットワークを駆使し、最適と考える訴訟方針・弁護方針について一審の段階から積極的に提案することが必要だということを悟りました。役員賠償請求訴訟は請求額が巨額になることも多く、保険だけでは賄えないような最悪のケースでは、会社のトップまで務めた人たちが自己破産に追い込まれ路頭に迷うことになってしまうリスクもあります。役員が経営責任を問われて損害賠償請求されることの恐ろしさをあらためて実感しました。
この経験もあって、とにかく被保険者を守るために、一審の段階から積極的にサポートをさせていただくようになりました。そうしてより多角的な議論が行われていくことが結果として役員だけでなくその会社のためにもなると信じていますし、それができるだけの知見もネットワークもAIGにはあるわけですから」
AIGは「グッドフェイス(Good Faith)」な仕事をさせてくれる会社
そのように難解な訴訟事案を後方からサポートしていく堤たちのチームは、訴訟を担当する弁護士の方針と異なる場合であっても、「被保険者のためになる」と判断をすれば堂々と意見をする。そう聞くと、弁護士側と衝突するようなこともあるのではないかと感じるかもしれないが、そのような事態に至ったこととはないという。
「D&O保険にご加入を検討されているお客さまへの提案に際し、営業社員と同席して私たち損害サービスのスタンスをプレゼンする機会をいただく場合もあります。“AIGは意見をどんどん言わせていただきます。もしそのような形のサポートをお望みでないのならば、AIGはおすすめしません”とはっきりとお伝えしたうえでAIGを選んでいただいているお客さまなので、訴訟対応は弁護士さんがするものの、AIGも第三者の立場から異なる目線でアドバイスするのだということを、ちゃんと理解してくれているのです」
もちろん、すべての顧客と堤は直接会っているわけではない。しかし、実際にお客さまに接する営業社員と堤たちで統一感をもった対応ができているので、顧客とのコミュニケーションもうまくいっているのだ。これはAIGの「強み」のひとつである「グッドフェイスな仕事」ということが関係している、と堤は説明する。
「保険の世界には、“グッドフェイス(Good Faith)”という有名な言葉があります。これは要するに、保険契約に関わる当事者は、常に誠実でいなければならないということなのですが、AIGグループはこのグッドフェイスが上層部から現場にいたるまで浸透しているので、営業も損害サービスも、お客さまに対して統一感を持った対応が出来るのです」
損害保険会社の部門は大きく分けると、お客さまに保険をおすすめする「営業」、保険の申し込みを承諾して保険契約を成立させる「引き受け」、実際に起きた事故に基づいて保険金を支払う「支払い」の3つに分かれている。そのため、それぞれの役割や立場の違いもあって、どうしても複数の組織が綿密に連携する必要があるが、AIGではグッドフェイスを基準にしっかりと連携することが出来ると堤は強調する。
「AIGでは部門間が縦割りになるということがありません。営業、引き受け、支払いという3つの部署が三位一体でお客さまの対応を行います。元々、AIG損保の前身であるAIU保険会社が日本で初めて役員賠償保険を発売したこともあり、歴史的にもD&O保険分野における高い評価をいただいていましたが、これからもその評価に恥じぬよう、D&O保険といえばAIGということを、さらに多くのお客さまに訴求していきたいですね」
「被保険者のため」になるのであれば、お客さまに弁護士が付いていても、AIGの持つ知見やネットワークを駆使して積極的な後方支援を提供していく。この会社では「お客さまのため」になることは、妥協なくとことん追求できる。
そんな「グッドフェイスな仕事」を奨励していることも、AIGの強みのひとつなのだ。
堤 浩介(つつみ こうすけ)◎AIG損害保険株式会社 ファイナンシャルサービスセンター長兼グローバル損害サービスセンター長
2007年9月旧AIU損害保険株式会社に入社。入社以来、主に企業賠償及びファイナンシャルラインに携わる企業向け保険のスペシャリスト。
多角的視点と柔軟な発想で、国内外の数多くの難事案をゴールに導くとともに、多様化するリスクに対応する新分野の保険実務をリードしている
AIG損保のグローバルリスクマネジメント
https://www.aig.co.jp/sonpo/global