芸術分野でNFTを導入する動きが活発化、暗号資産の次の波になるか

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非代替性トークン(NFT)が批判にさらされている。販売減やNFTマーケットプレイスOpenSea(オープンシー)の従業員解雇などもあって、消えゆくトレンドとしてすでに終わったものとされることさえある。これはテクノロジーの自然な進化であり、突然登場するテクノロジーの「ハイプ・サイクル」だ。「イノベーションの黎明期」から関心が高まっていき、その後「幻滅」を経て、意味のあるユースケースと価値創造に落ち着く。困難な状況である現在も、テネシー州など米国のいくつかの州では進取の気性に富んだリーダーらによる創造性が爆発的に開花している。芸術家や起業家は芸術、文化、慈善活動の分野で現実の問題を解決するためにNFTに注目している。

NFTは本物であることを証明された所有権を提供する。ここで歴史的な芸術品や収集品について考えてみよう。売買プラットフォーム「Rally Rd.」は1940年代のバットマン刑事・探偵マンガや1977年のエルビス・プレスリーの最後の公演のチケットなど歴史的資産をトークン化し、保有者がその資産を売却した場合に利益を得られるようにしている。

オーストリア郵便局は、1851年に発行された最も有名で価値のある切手「Vermilion Mercury(バーミリオンマーキュリー)」のデジタルと物理的なもの(しばしば「phygital[フィジタル]」と呼ばれる)でCrypto Stamp Artと実験を行い、2022年7月には実験の再解釈を行った。これらのフィジタルには、NFTと本人確認技術のリーダーである同国のVarius Card(バリウスカード)の近距離無線通信(NFC)チップが埋め込まれている。

大きな美術機関もNFTのエコシステムに参入した。ウィリアム・S・ペイリー財団はニューヨーク近代美術館(MoMA)のデジタル分野における取り組みを拡大するためにオークションで約7000万ドル(約100億円)を調達し、同館初のNFTを取得する可能性があると発表した。NFTは本物の美術(あるいは音楽)を検証し、購入者が不正な品物を手にすることがないようにする。

クラシック音楽をベースにしたデジタル資産をブロックチェーン上で構築するマルチメディアスタートアップであるLiving Opera(リビングオペラ)は2022年9月30日、モーツァルトのオペラ「魔笛」の特徴に基づいたジェネレーティブ・アート・プロジェクト「マジック・モーツァルトNFTコレクション」を立ち上げた。このコレクションにはデジタルアートと、モーツァルトの作品を使った音楽サイコロゲーム「Ein Musikalisches Würfelspiel」のレプリカをベースにしたパーソナライズされたオンチェーンのミュージカル舞曲が含まれている。
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翻訳=溝口慈子

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