新500円硬貨の「異形斜めギザ」は世界初? ここまで来た偽造防止の匠技

新500円硬貨には、これまでと違う大きな3点があった──(画像:財務省HP「解説!新しい500円貨」)

新しい500円硬貨の発行が昨年11月1日から始まった(日本銀行から金融機関への支払いが開始された)。

500円硬貨は1982年4月1日、岩倉具視の肖像がデザインされた500円紙幣に代わって発行された。今回の新500円硬貨発行は2000年以来、21年ぶりだ。

もっとも高額な硬貨である500円についての今回の新硬貨発行の目的は偽造抵抗力強化でもあることから(財務省によれば、2019年4月9日の改鋳公表時における偽造貨幣の発見枚数は比較的低位だったとはいう)、大変高技術な偽造防止技術が施されているのも特徴だ。

キャッシュレスが進む中での新硬貨発行からもうすぐ1年の今、財務省HP「解説!新しい500円貨」をベースに以下、編集してシェアするとともに、財務省貨幣の発行を担当する「理財局」担当者のコメントを掲載する。


デザインはこう変わっている


新硬貨と旧硬貨のデザインと仕様について、財務省のページから引用して以下、復習してみよう。



素材も、従来のニッケル黄銅1種類から、ニッケル黄銅、白銅、銅の3種類を混ぜたものになっている。そして、なによりも違うのは「バイカラー・クラッド」と「異形斜めギザ」だ。

新たな偽造防止技術の「ここがすごい」


新硬貨に使われている匠の技は、「バイカラー・クラッド」。2種類の金属板をサンドイッチ状に挟み込む「クラッド技術」でできた円板を、別の種類の金属でできたリングの中にはめ合わせる「バイカラー技術」を組み合わせた技術だという。


バイカラー・クラッドのイメージ図

「異形斜めギザ」は世界初


また新硬貨では、貨幣の側面に施されているギザの間隔が均一でなく、一部「異形」に、すなわち少し広くなっている。貨幣側面上・下・左・右の定位置に配置されているこの異形斜めギザの「通常貨幣(大量生産型貨幣)」への導入は世界初だ。この異形のギザによって、偽造が非常に難しくなった。


新しい500円貨と従来の500円貨の側面の比較写真

見えますか?「微細文字」


貨幣表面の縁に「JAPAN」(上下2か所)、「500YEN」(左右2か所)の文字を加工している。


「微細文字」はここに

「潜像」「微細点」も


従来の500円貨にすでに導入されていた高度な偽造防止技術は、以下のように引き続き搭載されている。

1.角度を変えると現れる「潜像」


新硬貨は、見る角度によって文字が見え隠れする。

上から見たとき(下に傾けたとき)は「JAPAN」の文字、

下から見たとき(上に傾けたとき)は「500YEN」の文字が現れる。


新しい500円貨と従来の500円貨の潜像の比較写真

2.微細な穴加工が


転写等による偽造を防ぐため、貨幣模様の中央部(桐部)に微細な穴加工(微細点)が施されている。


「微細点」

3.髪の毛より細い「微細線」


表面の「日本国」「五百円」の周りなどに、扇状に微細な線模様が施されている。微細線は髪の毛より細く、金属彫刻における最先端技術を使用したものだ。


「微細線」

なお、こういった貨幣の偽造防止技術は「独立行政法人造幣局」で研究・開発が行われている。

従来の500円貨も「まだまだ現役」


従来の500円貨は、新しい500円貨が発行された後も引き続き通用する(通常貨幣一覧)。新しい500円貨は令和3年度に2億枚を発行し、令和4年度には3.65億枚の発行を予定しており、今後、徐々に流通量が増加していく見込みだ。

自動販売機対応はまだまだ追いつかないが、この新500円貨の普及には相応の時間がかかる見込みであるため、財務省では、事業者の定期メンテナンスや更新とともに機器改修が進めば対応可能と考えている、という。


(以上、「解説!新しい500円貨」(財務省)を加工して作成)

世界最高水準技術を搭載、高い偽造抵抗力


最後に財務省の担当者に、新硬貨発行1年ほどを経た現在、伝えたいことを以下聞いた。

「新しい500円貨幣は世界最高水準の技術を搭載しており、高い偽造抵抗力を備えたものとなっています。偽造発生を防止し、国民の皆様から通貨に対する高い信頼を得て、安心して日常生活で広く利用されていくことを願っています」

構成=石井節子

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