こうした医療機関における患者による予約のすっぽかしを減らすことこそが、まさにMicrosoft(マイクロソフト)の最新の人工知能(AI)ツールが取り組もうとしている問題だ。マイクロソフトのインダストリーAI担当バイスプレジデントのメラブ・デビッドソンは、Microsoft Industryのブログで「医療業界での予約の不履行による年間コストは、米国だけでも1500億ドル(約21兆7100億円)以上です。予約漏れは、患者の健康状態の悪化につながるだけでなく、患者の来院がないことによる経済効果は、クリニック運営や固定費計算に大きく影響し、過剰な人員配置や予定外のダウンタイムが発生し、最終的には医療機関の日常業務に支障をきたすことになります」と述べている。
デビッドソンの強調する現象は重要だ。予約のすっぽかしは、患者だけでなく、臨床のエコシステム全体にとっても不利益となる。例えば、割り当てられた時間帯に患者が来なかった場合、その時間帯はその部屋が使用されないことになる。ほとんどの場合、次の患者をそのまま入れることはできない。なぜなら予約制のサービスであることを考えると、その次の患者は割り当てられた時間になるまで到着していない可能性が高いからだ。予約枠の1つや2つは無視してもよいものかもしれないが、全体的な観点から見ると、この空き時間はシステムに対して年間数十億ドル(数千億円)のコストになっている。
さらに重要なことは、無駄になった予約は、本当に診察を受ける必要があったにもかかわらず、診察を受けることができなかった他の誰かの機会を奪っていることだ。現在、プライマリーケアの医師は全国的に数カ月待ちの状態であることを考えると、これは対応を迫られる問題だと言える。