経済・社会

2022.09.27 07:15

自衛隊のジープに冷房とカーラジオがついた理由


また、冒頭で触れたように、このジープの正式名称は「トラック」だ。高速道路を走る場合、トラック扱いの料金を支払うことになった。普通に考えれば、原型になったパジェロは普通車の料金を払っているのに、なぜ自衛隊だけが! という話になった。ついでに言えば、「Yナンバー」をつけた公用車両を使う在日米軍関係者は公務であれば、高速料金は無料になっている。日米地位協定があるからだ。自衛隊の場合、災害派遣の場合は地方自治体の要請だから、という理由で無料だが、通常の移動時にはやはり高速料金を払っている。

自衛隊内部で、「さすがに、ジープなのにトラック料金を支払うのはあんまりだ」という声が上がり、後日、防衛省・自衛隊と国土交通省が協議し、自衛隊もめでたく普通車料金でよろしいということになった。この協議に成功した自衛隊関係者は、大いに褒められたという。

この自衛隊関係者は「こういう笑えない話は、まだまだたくさんあります」と言って、もう一つの「逸話」を教えてくれた。ある時期、財務省との予算折衝の席で、自衛隊の制服にかかる費用が話題になった。財務省の担当者は、制服が国産品でコストが高すぎると不満を漏らした。「国内を見てみなさい。ユニクロなんか、中国などで生産して価格を下げる努力をしているじゃないですか」と言い放ったという。最初は恐縮していた自衛隊関係者も、この発言にはキレたという。「我々の制服をなんだと思っているんですか。これは死に装束ですよ。それを中国に生産してもらえって言うんですか」。さすがに、財務省の関係者も我に返ったようで、以後、「制服を海外生産にしろ」とは言わなくなったという。

今、世間では防衛省・自衛隊の予算を、国内総生産(GDP)比2%まで引き上げるかどうかで、色々な意見が飛び交っている。予算を確保するのも大事なことだが、節約に走るあまり、こうした珍妙な問答が出てこない時代にはやくなってほしいとも思う。

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文=牧野愛博

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