引退か? 日本女子バスケのオリンピック銀メダリストで、リーグ2連覇の立役者が代表の打診を断り、1シーズン休む──。
馬瓜エブリンの突然の休養宣言は、そんな憶測を呼んだ。「この国では休むって大事件だけど、引退ではない。心から頑張った自分を認められるので、休むことにしました。人生の夏休み中です」。
いつもと変わらぬ笑顔で話す馬瓜だが、絶賛満喫中という「休み」は多忙を極めている。取材の数日前には日本初の選手主体となる3on3の試合を開催し、コートの設営から営業まで手がけた。今回の取材も、自身が立ち上げた2つの会社の仕事の合間を縫って駆けつけた。「小さいころからオリンピック選手と社長になるというのが夢で。だから会社の勉強をしたくて会社をつくったんです」。
20年にLAUNDRY JAPANを創業。ユニフォームを洗濯するときの悩みをヒントに洗濯物をまとめて洗える「スリーブバンド」の販売プロジェクトをクラウドファンディングで発表すると予想を超える187人の支援が集まった。実業団や企業に採用され、次の企画販売を計画中だ。同年にはCircle of Lifeも設立。コロナ禍で体育館での練習ができなくなったことがきっかけで、スポーツの自主練動画をアップするとプロのアドバイスを受けられる「Quick Coach」を開始した。
スポーツスキルのマネタイズはタブーか?
この事業で、引退後の仕事や人生に悩むアスリートの「セカンドキャリア問題」を解決したいという思いがある。「実績のある有名な元選手が八百屋で働いている、そんな話をよく聞くんです。スポーツスキルは、小さいころから身を削って積み重ねてきたもの。アメリカではスポーツがビジネスなのは当たり前だけど日本はスポーツのマネタイズを極端に嫌がる傾向がある。そういう文化にモヤモヤするし、改善したいんです」。
選手として、日本のスポーツビジネスに強い危機感を抱いてきた。グローバルではスポーツビジネス市場が飛躍的に成長しているが、コロナで大打撃を受けた日本のスポーツ参加市場規模はピークの19年から急降下(「2021年スポーツマーケティング基礎調査」)。「バスケだけではなく、業界の構造的な問題もあり、いまの日本のスポーツビジネスは限界が近いと思う。経営者としてビジネスの視点でスポーツを変えていく必要があると感じています」。