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2022.09.22 09:00

突然終焉を迎えた「PCR検査バブル」は、ハワイの医療界に何を残したか


このビジネスチャンスを見逃すな──こんな風潮がハワイの医療界にうずまいていた。観光客が来やすいようにワイキキに新しく場所を借りたり、SNSや広告などPRにやっきになったり。日本人スタッフを雇うクリニックも増えた。
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一方で、州観光局や在ホノルル日本国総領事館のウェブサイトには日本語で検査が受けられるクリニックの一覧が掲載されたり、地元の日本語メディアでは各クリニックの検査料金を比較掲載したり、PCR検査に関する情報合戦も加熱していった。総領事館に「なんでうちのクリニックを掲載してくれないんだ」と苦情を入れてくるクリニックもあったそうだ。

「あるクリニックが安い費用で検査している」という情報は、観光客だけでなく医療関係者にも瞬く間に広がった。ただ、常に需要に比べて供給が追いつかない状況だったため、価格競争や価格崩壊にまではつながらなかったようだ。

その結果、ワイキキの一等地に検査場を構え、たくさんのスタッフを雇っても、PCR検査がもたらす利益はそれをまかなって余りあるほどだったという。
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医療関係だけでなく、旅行会社やバス会社もPCR検査場を開設した。大手旅行会社の「HIS」はワイキキに検査場を持ったし、老舗バス会社の「ロバーツハワイ」もアラモアナとワイキキに検査場を設置した。これらの会社は検査装置を持つ医療機関と提携することで検査を提供していたようだ。

あるハワイ現地の旅行会社などは、通常の旅行業務が減少したために「日本語でPCR検査の予約を代行します」と謳ってそれを業務としていた。けっこう需要があったそうだ。さらにPCR検査場に社員を出向させている旅行会社もあった。仕事が減った旅行会社を救うという要素も、このPCR検査というビジネスにはあったのだ。

現在も、日本帰国時の陰性証明不要の条件として「有効なワクチンを3回接種している」ことが義務付けられているので、ワクチンを2回以下しか打っていない観光客はまだPCR検査を受ける必要があるが、その数は圧倒的に減ってしまった。

しかし、ある医療関係者によれば、「最盛期の10分の1に顧客が減ってしまっても、ワイキキの高い家賃を払ってクリニックの維持をしていける程度の利益は出る」という。それほど利益率が高いわけだ。

ハワイの医療界には大きな転換点


この「PCR検査バブル」で人生が変わった医師がいる。ハワイ生まれで、ハワイで長らく医師として勤務している相馬洋一先生だ。相場先生は日本語も堪能で、ハワイの複数の医療機関で仕事を持つプライマリケア・ドクター。プライマリケアとはいわゆる家庭医で、身体の不調を覚えた時に最初にかかる医師のこと。多くの診療科に精通しており、治療もこなすが、分野によって適切な専門医に紹介する役割も持つ。

「独立して自身のクリニックを持つことは、長い間考えていました。ただ、クリニックを開設する費用と開院当初は患者さんが少ない見込みとを勘案すると、経営的に成功するとは思い難い。どうしても一歩を踏み出すことができませんでした。でも、このPCR検査の状況を見ていて、もしこれがしばらく続くなら、チャンスかもしれないと思いました」
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文・写真=岩瀬英介(ハワイ在住エディター)

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