7月、福岡県主催の「Ruby・コンテンツフォーラムFUKUOKA」というイベントに参加した。福岡県ビジネスプロデューサーの勝屋久氏がモデレーターを務めるトークセッションに登壇し、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーの今野穰、歴史をテーマにした音声コンテンツ「コテンラジオ」で人気のを深井龍之介の両氏と、壇上で話す機会を得た。
「今後、どのような事業やサービスが大きくなるか」という勝屋氏の問いに対して、今野氏と深井氏が実に示唆に富む話をしてくれた。その話を自分なりに咀嚼したところ、時代の変化のとらえ方を私のなかで整理できたので、ここで紹介したい。
この数年、シェアリングエコノミーなどの社会的プラットフォーマーの上場が相次いでいる。スタートアップ企業へ投資する今野氏の立場から見ても、10年前に比べて、社会課題にフォーカスするスタートアップが圧倒的に増えたという。インターネットやテクノロジーを駆使し、明確な社会課題を払拭するために立ち上がる起業家が次々と出てきているが、彼らはしっかりとしたビジネス構想ももち合わせている。このあたりの変化を、今野氏は如実に感じているそうだ。
一方、歴史本を1000冊以上読み、人類の歴史的変遷を独自の考察眼で切り取っている歴史スペシャリスト深井氏は、別の角度からユニークな視点を披露してくれた。いわく、歴史的観点で見ると、いまは、人間社会の「思考OS」が変化に直面している時代なのだという。
人類は原始時代から、何度も思考OSを変化させてきた。哲学的思考の出現、宗教的思考の出現、人権的思考の出現……。社会のなかで生まれるこうした思考OSは、情報技術が発展するタイミングで進化を始め、既存の制度との間にギャップが生じるたびにアップデートを繰り返してきた。そしていま、まさにそのアップデートが起きているタイミングだというのだ。
高まる社会起業家への期待
これまでの思考OSでは、社会課題の解決は、時の権力者や政府が担うものと考えられてきた。課題解決の仕組みは行政サービスや国家的なアクションとして提供するのが当たり前で、人々もそうあるべきだと思っていた。
しかし、社会課題の解決をテーマにしたスタートアップが次々と生まれ始め、世間においても、政府の動きだけでなく民間のこうした社会的企業に、その役目を期待する人が増えている。実際、その流れを加速させるため、金融面、人材面、政府の方針なども含めて制度やエコシステムが変わってきている。このような社会的変化の兆しこそ、思考OSがアップデートされていることの証しだという。
そうとらえると、社会課題の解決を謳うスタートアップが増えているという流れも不思議ではない。こうした思考をもつ企業が社会で担う役割は、ますます広がっていくのだろうと思う。