「私たちはけっしてこのクルマをSUVとは呼んでいないんですけれどね」。発表に先がけ、ボローニャ空港からクルマで40分ほどのマラネロにある本社に記者を呼んで開かれたお披露目。その席上でフェラーリでチーフマーケティング&コマーシャルオフィサーを務めるエンリコ・ガリレア氏は開発の背景を説明してくれた。
プロサングエ、イタリア語でサラブレッドを意味する名前をもった新型車のお披露目会には、このクルマに直接たずさわったフェラーリのエグゼクティブが勢揃い。上記ガリエラ氏に加え、チーフプロダクトディベロップメントオフィサーのジャンマリア・フルゼンツィ氏、チーフデザインオフィサーのフラビオ・マンツォーニ氏が、かわるがわる車両の説明をしてくれた。
「いまのブームに遅ればせながらのっかったわけではないんです。顧客はずっと前から、家族や仲間、友人たちとで乗れるフェラーリも欲しい、と私たちに要望していました」(ガリエラ氏)
かつて80年代初頭に、フェラーリはピニンファリーナとともに4ドアのプロトタイプを作ってみたことがあるという。でも、当時のオーナーだったエンツォ・フェラーリが”これはフェラーリの要求する性能を満たしていない”と、計画を白紙に戻したのだそうだ。
「だから私たちはプロサングエをスポーツカーと呼んでいます。もっと早く発表してもよかったんじゃないかと訊かれることもありますが、満足いく走りをもたらすアクティブサスペンションシステムが完成したので、満を持しての発売へとこぎつけたのです」
フルゼンツィ氏は発表までの過程を上記のように説明。スポーツカーメーカーであるフェラーリが手がけるだけに、機能的な意味づけがないと製品として成立しない。それがフェラーリのビジネスの基本なのだ。
エンジンもしかり。エンジンのことをフルゼンツィ氏では「ソウル」と呼ぶ。クルマの魂はエンジンなのだというのが、創業者であり、内部のみならず顧客からも神のように接せられたエンツォ・フェラーリの考えを引き継いでいるのだ。
フェラーリは伝統的に、「GT」カテゴリーのモデルには、惜しげもなくV型12気筒エンジンを搭載している。プロサングエしかり。ただし今回は完全なフロントミドシップ(前車軸の後ろにエンジンを搭載するレイアウト)。かつ「エンジンはほぼ新設計」とフルゼンツィ氏は胸を張る。
65度のバンク角をもった6496ccのドライサンプ式エンジンは、725CV(540kW)の最高出力と716Nmの最大トルクを発生。8段ツインクラッチATを介して前後にトルクを配分する。
ハンドリングの追求は、フェラーリの常で、さきに触れたように、アクティブサスペンションに四輪操舵システムが組み合わされている。サスペンションはエアでなく電磁クラッチを用いており、乗り心地を確保するために金属バネも使う。
「エアサスペンションを使わないのか、ですって? 反応が遅すぎて、私たちのプロダクトには向いていません」。サスペンションシステム担当デザイナーは一言で斬り捨てた。これもなんともフェラーリらしい。