スタイリングは写真から想像していたより、ずっと官能的な雰囲気だ。もちろん全高が1585mmもあるので、これまでのフェラーリのGTとはだいぶ印象がちがう。
「とくに注目していただきたいのは、フローティングボディと私たちが呼ぶデザインテーマです。ホイールアーチまわりにスペースを感じさせるようなくぼみをあえて設けて、ボディが上と下に分かれているような視覚的印象を作り出しました」
デザイン統括のフラビオ・マンツォーニ氏はこのように説明してくれる。
「同時に、空力的な処理をボディ各所に施しています。たとえばヘッドランプの上にスリットを設けてそこから空気を取り込んでダウンフォースを生み、それをエンジンルームからの熱気とともに、フロントホイールハウスの背後のアウトレットから抜きます」
このような空力的な造型は各所に見受けられるが、それがデザインと同化しているのが、スポーツカーを作り続けてきたフェラーリならでは、といえる。
インテリアも魅力的だ。ダブルコクピットのテーマは従来のフェラーリモデルから引き継いでいるが、2つの山型のモチーフはリアシェルフにいたるまで採用され、凝った造型美が印象に残る。
リアシートは完全な独立タイプ。フロントシートと似ているバケット型のシートが2つ並べられる。前後に電動でスライド可能で、バックレストも電動調節式。期待以上にリラックスできそうだ。レッグルームも広くできる。
「なぜ5人乗り(後席ベンチシート)を用意しなかったかというと、あくまでフェラーリはスポーツカーだからです。どの席にいてもコクピットと同じような感覚を味わっていただきたいので、ホールド性にすぐれるシートが必要なのです」
マンツォーニ氏はそう答えた。
「たとえばSF90のようなモデルのオーナーは、家族でフェラーリを体験したいという希望を表明します。そのために開発した4人乗りのフェラーリなのです」。ガリレア氏はもういちど強調するのだった。
いずれにしても、いまの世のなかで、「フェラーリ史上、最もパワフルなV12エンジン」(フルゼンツィ氏)を開発したというのも、ずいぶん思い切ったことだ。ターボすらついていない。昔からのフェラーリファンには大歓迎されるだろうが。
チーフデザインオフィサーのフラビオ・マンツォーニとデザインチーム
今後、ハイブリッドなどほかのパワートレインの計画はないのか、と訊ねると、「しばらくはずっとこのままでいきます」と答えが返ってきた。
価格は39万ユーロで、デリバリーはまず欧州向けに2023年の第2四半期からスタートする。生産台数は? という質問に対して、「需要より1台少なく、というポリシーはいまも不変です」とガリレア氏。笑いながら。
「プロサングエを何台生産するかについて、私たちは数字を明らかにしておりません。需要は明らかに多そうですが、このクルマばかりになっても、ね」