その頃の日本経済と言えば、バブル崩壊を受けて低迷した状態。そんななか海外の投資家からは、「日本に投資する理由などあるのか?」という疑問がたびたび投げかけられていた。
「ウーマノミクス」とは、「ウーマン」(女性)と「エコノミクス」(経済)の二つの単語を組み合わせた造語で、女性の活躍推進によって経済を活性化するという概念だ。
当時の日本における女性労働参加率はわずか56%。日本経済を悲観論が取り巻くなか、もっと多くの女性が家の外で働けばGDPを押し上げられるのではないか。そんな仮説をもとに、ウーマノミクスこそ未来を楽観視できる理由になると考えたのだ。
それから20年以上が経ち、2019年に日本の女性労働参加率は過去最高の71%に達した。これはアメリカ(66%)やヨーロッパ(63%)を上回る。しかし大半の女性はパートタイムで働き、リーダーの地位に就く女性の割合は官民ともに先進国最低水準だ。
そんななかゴールドマン・サックスが2019年に発表した『Japan Portfolio Strategy ウーマノミクス5.0:20年目の検証と提言』では、日本が男女の就業率格差を解消し、男女の労働時間格差をOECD平均にまで引き上げれば、GDPを最大15%押し上げられるという見通しを示している。
ダイバーシティが「あるとよい」理由に納得する人は多いが、企業の成長に「欠かせない」というと未だに多くの人が首を傾げる。
しかしそれは数々の世界的な実証研究が裏づけている。たとえば2011年にCatalystがフォーチュン500企業を対象に行った調査では、女性取締役が3人以上いる企業では、女性取締役がいない企業に比べて、ROEが平均50%高い(15%対10%)という結果が出た。
日本ではゴールドマン・サックスが2018年から2019年にかけて東証一部上場企業297社を対象に調査したところ、女性管理職比率が高い企業では平均売上成長率とROEが特に高いとわかった。