●人的資本の情報開示例:ステークホルダーとの対話
(花王サステナビリティレポートより抜粋)
▼働く人の視点───情報のドコを見ればよい?───
人的資本の情報開示が進むなかで、働く人は開示された情報のうち、どこに着目すればいいでしょうか。多様性への配慮、働きやすさの整備、人材育成の取り組みなどさまざまですが、あえて1つあげるなら「従業員エンゲージメント」ではないかと思います。
従業員エンゲージメントとは、働く人の所属企業や仕事への熱意の度合いです。どれだけ生き生きと働いているかを示している指標とも言えます。企業の業績や労働生産性との関連があることからも注目されており、今後多くの企業が自社の従業員エンゲージメント情報を開示することが予想されます。
いくら企業が「人的資本投資」や「人材第一」を謳っていても、実際に現場で働く人々が生き生きしてなくては意味がありません。従業員エンゲージメントは、就職や転職で企業を選ぶ時や、自分が所属する企業の状況を知りたい時に参考になるでしょう。
私たち一人ひとりが、この社会における大切な人的資本です。そして、自らの人的資本をどの場所で活かすか、自分で決めていかなくてはなりません。企業が開示する人的資本情報は、その際の手がかりになり得ます。
「人的資本の情報開示」は一見すると株主・投資家のために見えますが、実は働く人のキャリア形成の観点でも注目すべき取り組みなのです。
「個の尊重」を中心とした人的資本への取組み
より具体的なイメージを持っていただくため、私たちリクルートの取り組みもご紹介させてください。もっとも、私たちもまだ開発途上であり、試行錯誤を繰り返しているということが前提ですが、人材に対する価値観を中心とした実践や情報発信のチャレンジとしてご参考になればと思います。
リクルートには、大切にしている価値観が3つあります。「新しい価値の創造」「個の尊重」「社会への貢献」です。このうち、特に人的資本のマネジメントの起点となっているのが「個の尊重」であり、次のような考え方です。
「すべては好奇心から始まる。一人ひとりの好奇心が、抑えられない情熱を生み、その違いが価値を創る」
この価値観が「一貫性のあるストーリー」の軸となるものです。個々の好奇心を中心とした価値創造を目指しており、会社とは好奇心を起点に協働・協創が生まれる “場” であるとしています。そして、一人ひとりの好奇心を育み、最終的な価値創造へとつなげるためのキーワードが「自律」「チーム」「進化」です。会社は、リクルートという “場” に集う社員に対してこの3点を期待し、求めています。
●自律
自己を律し、自身の責任で、自己選択できる力●チーム
個人の「強み」を終結し、個の限界をチームで超える●進化
非連続な変化に柔軟に対応し、自己変容するこの3つの体現度は、年2回「エンゲージメントサーベイ」を実施し、モニタリングを行っています。その結果のデータも、以下のような形で開示しています。
また、一人ひとりの好奇心を育み解放するために、さまざまな人事施策・制度をデザインしています。それらは 「点」 として展開されているわけではなく、社員の自律・チーム・進化を促進させるという目的に紐づいており、それぞれの人事施策・制度が、自律・チーム・進化の要素を複数含んでいるところがポイントです。