ビジネス

2022.09.09

31年間で平均19%のリターンを出すヘッジファンド王者が予見する未来


「わが国には、穴埋めしなければならない巨額の赤字があります。世界中の主要な買い手が米国債や他のドル資産から手を引いてしまったら、我々は今後長きにわたって穴埋めにはるかに高い費用をかけなければなりません。そうなれば、我々の社会保障を提供する能力や研究開発に投資する能力、教育やインフラに投資する能力が奪われることになります」

そのような状況はすでに起きている。3月下旬、ロシアが燃料を購入する日本企業にルーブルでの支払いを要求したのだ。中国がドルではなく人民元での支払いを要求するのも時間の問題かもしれない。

「各国は、米国の好意にすがらなければならない状況に置かれたくないでしょうから」

しかも、これは一次的なドミノ効果に過ぎない。事態はさらに悪化するとグリフィンは考えている。現在の世界経済にイノベーションは不可欠だが、ロシアや中国に米国の技術へのアクセスを認めなければ、彼らは別の解決策を探すようになるだけだ。

暗雲が漂っているにもかかわらず、投資家は物価の急上昇に動揺すべきではないとグリフィンは考えている。価格の急騰はおのずと解消されると信じているからだ。例えば天然ガスも、わずか15年前には非常に価格が高く、供給も不足していた。しかしフラッキング革命(水圧破砕法を使ったシェールガス採掘)により、米国のガスは安価で大量に採掘されるようになっており、1日2億L弱が欧州に輸出され、ロシアのガスに取って代わっているほどだ。

グリフィンは、「商品の値段は通常、いつの時代であっても、その商品をより安価に確保できる方策が見つかるか、その商品に代わるより低コストの別の解決策が見つかると、劇的に下がっている」と指摘する。最良の長期投資の対象は、米国企業のあり方に革命を起こす最前線にいる革新的で急成長している米国のテクノロジー企業だという。

ビットコインに関しては、投資家としてのグリフィンは懐疑的だ。「環境的、あるいは経済的な観点から見て、ビットコインに効率的なところは何もない。決済手段として機能するとは思えない」と語る。

「個人的には、価値の保存手段として暗号通貨を保有することの魅力がいまだにわかりません。とはいえ、私が保有している資産について同様の主張をする人もいるでしょう。米国人アーティストの抽象画を収集していますので」
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文=マニート・アフジャ & クリス・ヘルマン 写真=アーロン・コタウスキー 翻訳=木村理恵 編集=フォーブス ジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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