日仏2拠点からヨーロッパ特化へ ニース在住シェフが「学び直す」理由

写真=松嶋啓介

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

9月5日配信は、フランスで外国人として最年少でミシュラン一つ星を獲得した、「KEISUKE MATSUSHIMA」の代表取締役兼総料理長である松嶋啓介がゲスト。「しばらくはヨーロッパを遊び倒したい」という願望の真意とは?


中道:前回に引き続き、「KEISUKE MATSUSHIMA」の代表取締役兼総料理長である松嶋啓介さんをお迎えしてお届けしたいと思います。前回の最後に、世代間ギャップの話題が出ました。そこに日本とフランスの違いはありますか。

松嶋:ギャップの有無は変わらないと思いますが、日本とフランスでの価値観の違いはやはりあります。フランスで育った娘が19歳になり、価値観に違いが出てきましたね。

ただ、僕らとしては理解する努力をしなければいけないと思っています。受けてきた教育も、見ようとしている世界も違いますし、そもそも僕たちのやり方が正しかったかもわかりません。正しくなかったからこそ、現代の環境破壊が起きているわけですから。

中道:なるほど。

松嶋:環境破壊は、地球環境はもちろんのこと、社会環境、会社環境などにも当てはまり、現代は多くの破壊が起きています。若い世代はそうした破壊を見てきていることもあり、環境破壊に敏感です。そこで僕らとしては、若い世代が見定めようとしていることは何か、知る努力をしなければいけない。そういった意識はできるだけ持とうとしています。

中道:確かにその通りですよね。そもそも世代に関係なく、誰かに価値観を押し付けられたくないという前提もあるのかもしれません。

ただ、全く違う環境で育っているだけに、相手を知ろうと努力しても、すぐに知れるわけでもないと思います。それでも知ろうとするのは、松嶋さんが20歳でフランスに渡った時のように、一歩踏み出す感覚に近いのでしょうか。

 
松嶋氏の娘さんが留学するオランダにて

松嶋:20歳のときは、ただの無知なだけで、今はそれなりに知識もついてきました。無知と、自分の知識がありながら相手を理解しようとするのでは違って、今は、相手を受け入れなければいけないという意識が強いとも言えますね。

中道:難しいところですよね。うちの子供は男だということもあるのかもしれませんが、すべてを受け入れてしまうのではなく、教えなければいけない面もあると思っています。

松嶋:物事の捉え方が本当に違うと痛感するときはありますね。僕らは働いて稼いで金持ちになれば幸せになれると考え、仕事を頑張らなければいけないと育ってきたと思います。この点は日本人でもフランス人でも、世代としてほぼ共通しています。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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