日仏2拠点からヨーロッパ特化へ ニース在住シェフが「学び直す」理由

写真=松嶋啓介


松嶋:ところが、若い世代は親が働きすぎて家にいなかった寂しさから、働きすぎは決して善ではないと考えているようです。

中道:確かにそうですね。

松嶋:だからこそ、働きすぎないように効率よく仕事すべきだという考えが根本にあるようです。まずは家庭の幸せありき。その次に仕事があればいいという順序なので、僕らとは考え方が全く違います。

もちろん、どちらが正しい、正しくないという問題でもありません。そもそも、大金を稼ぎながらも幸せそうに見えない人たちを、僕は大勢見てきましたからね。もしかしたら若い世代の方が正しい見方をしているかもしれない、だからこそ耳を傾けなければいけないと思っています。

中道:松嶋さん自身は、コロナの影響で原宿の店舗を閉店され、今はニースの店舗に集中している時期かと思いますが、今後についてイメージはあったりしますか。

松嶋:まず、コート・ダジュールをはじめ、ヨーロッパを遊び倒したいですね。10年にわたって日仏の往復を繰り返す忙しい生活をしていたため、自分自身がその素晴らしさを享受できていなかったので。


20年以上交流のあるスローフードインターナショナルの名誉会長、カルロ・ペトリーニ氏と

中道:なるほど。

松嶋:あとは、文化をより掘り下げて学びたいという欲があります。ヨーロッパを開拓して、その深い部分を掘り起こして、それらを、自分自身のフィルターを通して感じて表現できるようになりたいなと。

日本とのかかわりについては、予防医学や公衆衛生、身体的だけでなく精神的な健康も含め、これまで企業とともに取り組んできた食に関する発信を、今後も続けていきたいですね。

食分野は、高齢化が進む日本において非常に重要な影響を持つはずなので、日仏の往復で気づいた多くのことを、点と点を結びつけるように社会に落とし込んで、環境を良くしていきたい。

ただ、日本で再び店舗を持つことに関しては考えていません。店舗を持つには多くの時間を割く必要がありますし、僕が出る幕はないかなとも思っています。

中道:日本での活動は、企業との取り組みが多くなるイメージですか。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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