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2022.09.06

いかに五感で感じられるか? その経験が未来の自分を変える丨テレビ朝日 利根川広毅

テレビ朝日・コンテンツ編成局の利根川広毅

コロナ禍の音楽業界は、有観客でライブが開催できなくなるなど様々な課題に直面したと同時に、TikTokなどのプラットフォームから流行が生まれるような新たな可能性も見えてきた。社会環境もファンのあり方も変わるなか、若手アーティストはどのようなブレイクを遂げるのだろうか。

テレビ朝日系列の『MUSIC STATION』や『関ジャム完全燃SHOW』のプロデュース・演出を担当するなど、様々な音楽番組を手掛けてきたテレビ朝日・コンテンツ編成局の利根川広毅。

30歳未満の次世代を担うイノベーターを選出する企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」の音楽部門のアドバイザリーボードに就任した利根川が見つめる、今の音楽業界とは。


──現在の音楽業界の特徴や課題感を教えてください。

コロナ禍ではネット志向やボカロ(ボーカロイド)系が強くなりましたが、ここ1年ほどはそのゆり戻しもあり、特にリアルなライブができるようになったのは良い傾向だと思っています。ただ、売れ方としては、「ネットからのヒット」という形が定番化し、今後もしばらく続くとみています。

今は、YouTubeはじめ、SNSで曲を発信できる時代です。さらに、インディーズアーティストのデジタル音楽配信の委託を行うTuneCoreのような会社も出てきて、自分の音源をApple Musicなどのサブスクで配信することも可能になりました。

つまり、ミュージシャンになりたいと思ったら、メジャーレーベルを介さなくてもインターネットによってプロアマ問わず同じ土俵に立てるし、より短期間でヒットチャートの上位になれる可能性が高くなったんです。

そこで火がつけばワンチャンがあり得る。夢はあります。しかし、早く上に行き過ぎて、その後が続かないアーティストがたくさんいることも事実です。昔のように、小さなライブハウスでレコード会社やマネジメント事務所の人に見つけてもらって、2〜3年がかりでじっくり育成してもらいつつ、シングルやアルバムを発表していたら、もしかしたら、10年15年と息の長いアーティストになっていたかもしれないな、なんて思うこともあります。



音楽視聴の主流がサブスクになったことで、レコード会社も「1曲のヒット」をとにかく早く出さなければいけないと焦っている。そのため、「ネット上でどう仕掛けていくか」に、アーティスト側も音楽関係者も向かっていき、一曲の寿命、アーティストの寿命を短くしてしまっているように思います。

一曲の寿命が短くなっていることは、僕たちテレビ側の人間も心配しています。TikTokなどのUGC(ユーザー生成コンテンツ)で火がついても、それは結局音源を使われているだけで、その曲を本当に心から好きになってもらっているかというとそうではない。

「TikTokで1億回も再生されている」という触れ込みで、リアルなライブをやるとなっても、大きいライブ会場が埋まらないこともしばしば。ネットとリアルの評価が乖離していることも多いですね。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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