「ヒット曲を作りたい」
──利根川さんは、フリーランスから、日本テレビ、テレビ朝日というキャリアを歩み、様々な音楽番組を手掛けてこられました。U30世代のときに抱いていた夢は。
この業界に入ったのは、やはり音楽が好きだったからです。就職を考える時期になったとき、自分がミュージシャンになる才能がないのをよくわかっていたので、レコード会社に入って楽曲制作に携わり、アーティストと一緒にヒット曲を生み出したいと思いました。
ただ、レコード会社の入社試験を受けたんですが落ちてしまい、「何をしようか」と迷っていたときに、紹介されたのが音楽番組やコンサート制作をやっている会社でした。そこでテレビの音楽番組のADをやることになりました。
当時は、テレビなんて全然頭になかったのですが、現場に行ってみるとすごく面白くて。というのも、当時就職した会社の社長がすごい人で、NHKの紅白歌合戦が視聴率80%を獲っていた時代の総合演出を手掛けていたんで。現場では、カメラ、照明、ステージング、音楽の編曲にまですべて明確に指示を出していて、その姿を見て、「かっこいい、自分もこれをやりたい」と思いました。
その後、テレビ局に入社したのも「ヒット曲を作りたい」という理由からでした。自分がつくっている番組に、自分が応援したい・尊敬するアーティストをブッキングして、いい演出で歌ってもらい視聴者から反響が得られたら、そのアーティストの曲がヒットしたりそのアーティストの良さを知ってもらえたりします。テレビの仕事は、そこに夢があるんですよね。
アーティストに「この間の番組、良かったよ。ありがとう」って言ってもらえると本当に嬉しいんです。今後も、変わらずに続けていきたいですね。番組を長く続けて、次世代に良い形で継承していくことも大事だと思っています。
スマホだけじゃなく、外の世界も見てほしい
──最後に、これから音楽業界で活躍していく次世代の子どもたちへ、メッセージをいただけますか。
スマホの世界に留まっているだけじゃなく、外の世界に出て「体験」をしてほしいです。僕もスマホをよく見ますし、スマホから情報を得ることも大切なのですが、特にクリエイティブ制作においては、自分の五感で直接感じたことこそが原体験になると思います。
音楽でなくても、スポーツ、演劇など分野は何でもいいと思います。何らかのコンテンツを生で直接見て、聞いて、体感して「自分という人間が何に反応するか」を感じてみてください。
僕も素晴らしいライブに行ったときは、勝手に身体が持っていかれる感じがするんです。画面越しではできない経験。あの渦の中に入ると、高揚感やドキドキで、怖くなったりもする。そういうことを若いときにどれだけ経験しているかで、大人になったときの物事の感じ方が変わると思います。